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東日本大震災から今年で12年。今考えたい「災害レジリエンス」

東日本大震災から今年で12年。みなさんは「災害レジリエンス」という言葉を聞いたことがありますか?今回は「災害レジリエンス」について防災科学技術研究所 災害過程研究部門 特別研究員の塩崎由人さんにSBSアナウンサー近江由佳がお話を伺いました。

※2023年3月8日にSBSラジオIPPOで放送したものを編集しています。

静岡は「災害レジリエンス」発祥の地

近江:防災科学技術研究所は、どんな研究をしているんですか?

塩崎:地震や津波の仕組みや地震の揺れが建物に与える影響といった災害のメカニズムを明らかにする研究、災害時における自治体の対応の仕方、復旧復興のプロセスを対象とする研究など、災害に関する様々な研究を行なっています。

近江:「災害レジリエンス」とは、どのような考え方なのか教えてください。

塩崎:おおまかにいうと災害による被害やネガティブな影響をできるだけ小さくし、被害から復興していく能力であり、そうした能力を高めていこうという考え方になります。

近江:災害復興力・回復力と訳すことができるんですね!「災害レジリエンス」という言葉はいつからあるんですか?

塩崎:災害の研究では1980年代以降、材料工学や心理学、生態学の研究から影響を受け、徐々に災害の分野でも使われるようになりました。ここ10年ほどで、とても頻繁に使われるようになった印象です。

余談ですが、世界で初めて「レジリエンス」(正確にはレジリエンシー)という言葉が使われたのが静岡県だと言われています。静岡県は1854年の安政地震で、地震と津波の被害を受けました。

江戸時代の末期、黒船の来航でペリーと一緒に来ていたアメリカ人のロバート・トゥームズが、下田の街が災害から復興・回復していく様子を”レジリエンシー”という言葉を使って表現したという記録が残っています。ですので静岡県は「災害レジリエンス」発祥の地と言っても過言ではありません。

今、注目されている理由

近江:どうして今こうした考え方が注目されているんですか?

塩崎:近年日本でも世界でも数多くの自然災害を経験したり、気候変動の影響で風水害のリスクが高まっています。その中で、災害による被害を完全に防ぐことや、被害をゼロにしていくことは、難しいということが認識されるようになりました。

災害によって被害を受ける可能性があることを前提に、その影響を少しでも小さくし、被害から立ち直っていく力を社会として培っていく必要があるという理由からです。

近江:「災害レジリエンス」の例として、どんなことが挙げられますか?

塩崎:「災害レジリエンス」は、どんな組織や社会も多かれ少なかれ持っている能力です。例えばコロナ禍も災害のひとつですが、感染を防ぐためにテレワークをしたり、リモート授業を行なうというのも「レジリエンス」のひとつの形といえると思います。

コロナ禍だけでなく地震や水害のときでも、我々が持っている資源を上手に組み合わせ、柔軟に困難に立ち向かっていける社会が、「災害レジリエンス」の高い社会であると考えています。

災害への備えや考え方

近江:「災害レジリエンス」を高めるためにはどうしたらいいですか?

塩崎:地震、津波、水害、コロナ禍など多様な種類の多様な規模の災害があります。まずはいろいろな災害について「発生時に何が起きるのか」「住まいや生業にどのような影響が出そうなのか」を考えて行動していくことが必要だと思います。

そのうえで「どんな備えができるのか」「地域や自宅にどんな資源があるのか」ということを、自分だけでなく、お住まいの地域の中でみんなで考え、災害への備え方の選択肢を増やすことも重要です。

近江:防災科学技術研究所として行っていきたい取り組みを教えてください。

塩崎:私個人の考えになりますが、災害について考えるきっかけをつくる場を設ける必要があると感じています。

そのために研究を通して「災害が起きたらどういう状況になってしまうのか」を、みなさんにわかりやすく伝えられるような情報発信をしていきます。そのうえで何が備えられるのか考えるワークショップやきっかけづくりの場を提供していきます。

近江:東日本大震災から12年、改めてみんなで考える機会を作れればと思いました。塩崎さんありがとうございました。
今回、お話をうかがったのは……塩崎由人さん
防災科学技術研究所 災害過程研究部門特別研究員。博士(工学)。都市計画、都市防災、まちづくり、災害レジリエンスが専門。都市や地域の災害に対するレジリエンスについて、数理モデルを用いたメカニズムの解明や評価手法の構築に取り組んでいます。
防災科学技術研究所(https://www.bosai.go.jp/) 
 

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