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【災害と流言】関東大震災発生当時、不安の中でデマ拡散…1923年の大地震から学ぶことは?

静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは、関東大震災発生からまもなく100年が経つことを契機に考える「災害と流言」。先生役は静岡新聞論説委員長橋本和之です。(SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」 2023年8月29日放送)
 

(山田)関東大震災から100年ということですね。8月28日から静岡新聞で連載が始まりました。

(橋本)1923年の9月1日午前11時58分、相模湾の北西部を震源とするマグニチュード7.9とされている地震が発生し、東京、神奈川とその周辺で甚大な被害が出ました。被災者が190万人、建物の全壊が約10万9000件。

当時の家は木造ですから燃えやすく、火災の被害も甚大でした。都市の機能が麻痺してしまい、流言つまり「デマ」が原因でたくさんの人が殺害されるような事件もあったそうです。未曾有の大災害だったということだと思います。

静岡県内でも、東部や伊豆半島を中心に建物倒壊、津波などの被害があり、400人以上の死者や行方不明者が出​ました。南海トラフ地震も想定されているので、100年という機会に合わせて当時から学べるものはないかということで、連載を始めています。

連載の初回では、その流言の状況と危険性について取り上げました。天災で大きな犠牲が出て、その上、噂によって人の命が奪われてしまうということもあった。本当に繰り返してはならないことだと思います。

(山田)当時、どういう噂でどういう殺害事件が起きてしまったんですか。

(橋本)日本にいた朝鮮人が標的になりました。朝鮮人が暴動を起こすという噂が流れて、朝鮮人が東京や神奈川を中心に各地で殺されたと伝わっています。朝鮮人に間違えられて暴行を受けたり殺されたりした事例も出ていて、本当にデマの怖さがわかる出来事だったのではと思います。

(山田)みんなパニックになって、不安の中で正しい情報がわからなくなっていたんですね。

(橋本)富士宮市に残る体験記によると、朝鮮人に関する噂以外にも、「富士山が近く噴火する」、「さらに大きい地震が起きる」というような噂も流れたようです。それに翻弄された人たちもたくさんいたんじゃないかと思います。

善意の人たちが拡散してしまうことも

(山田)デマに関しては今も変わっていない部分があります。

(橋本)不安につけ込むような形で噂が流されるということがありますが、噂が伝わってくる段階で、全然悪気がない人たちも友達や家族の安全のために噂を流してしまうということもあると思うんですね。

記憶に新しいのは、2011年の東日本大震災の際、「石油コンビナートの爆発によって有害物質が流れた」という流言です。熊本地震のときには、「ライオンが逃げた」という話が画像付きで流れたということもありました。流した人は、面白半分でやったのかもしれませんが、広まるときは、善意の人たちによっても拡散されるんです。

身近な例を挙げると、昨年の台風15号のときに、静岡市の被害状況だと偽ってAIで作った画像が流されるということもありましたね。

拡散する前に、確かな情報か見極めたい


(橋本)約100年前の関東大震災と今と違うのは、SNSが発達してあっという間に偽情報が広がるという点です。さらに、AIなどの技術が進んで、見たら本当だと信じてしまうような画像が簡単に作れてしまう。

もっと悪意があれば、例えば実際のニュースの動画に、実在するアナウンサーの声をAIで作って、自分が言いたいことを言わせて被せてしまうこともできる。それを流したときに、偽情報だって見分けることができるかどうかと考えると、ちょっと怖いと思いませんか?

(山田)多分、見分けることはできないと思う。本当にパニック状態で何か情報を得なきゃっていうときに流れてきたら判断できないですよね。どうしたらいいですか。

(橋本)記事の中で専門家が述べていますが、大きな災害のときには、必ずデマが流れるものだという認識を持ってほしいと思います。それを前提にした上で、自分が情報を得たときに、不確かな情報はもう拡散はしないということが大事だと思うんです。

今は、当時と違っていろいろな形で公的機関が情報の発信を試みると思いますので、まず信頼できるところの情報を確かめてみる。多くの制約がある中で大変ですが、そうしたことを徹底するのが大事なのではと思います。

(山田)デマが流れる前提でいた方がいいということですね。

(橋本)信用しやすいようなデマが流れますよね。大きな地震があったときなど、どうなってるんだろうと思ってるときにデマの情報がぽっと入ってくるので、拡散しちゃうってことがあると思います。だから、そういう場ほど、安易に信じずに拡散しない。まずその心構えが必要ではないかと思います。

(山田)自分も拡散しないということですね。「拡散希望」と書かれていても、注意が必要ですね。静岡新聞の連載を見ておくと、いざというときの心得になったり、こういう避難訓練をやってるよっていうのがわかったりすると思います。今日の勉強はこれでおしまい!

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