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【サッカー藤枝MYFCの須藤大輔監督】超攻撃的サッカーの原点とは?熱血指揮官が抱く野望とは?

静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「藤枝MYFCの熱血指揮官 須藤大輔」。先生役は静岡新聞運動部専任部長の寺田拓馬です。(SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」 2023年9月28日放送)

(寺田)サッカーJ2藤枝MYFCを率いる須藤大輔監督は「超攻撃的エンターテインメントサッカー」を目指しています。9月28日の静岡新聞で大きく取り上げましたが、この監督はサッカーチームの監督の枠組みには当てはまらない魅力がある。今回は須藤監督の熱い言葉の裏にある狙いや考えを紹介しようと思います。

須藤監督は1977年生まれ、神奈川県出身。桐光学園高時代は、元日本代表の中村俊輔さんの一つ先輩でした。高校1年、3年時に全国選手権に出場しましたが、須藤さんは目立った活躍ができなかったということです。

東海大を経て、水戸に入団した後、湘南、甲府、神戸でプレーし、J1では45試合で6得点、J2では177試合35得点。2007年のナビスコカップで得点王に輝いた実績はあるんですが、日本代表にはちょっと遠かったかなという選手だったんですね。

東海社会人1部だった藤枝で2010年に引退した後、奥さんの実家がある甲府に戻って山梨学院大のコーチをしていました。

Jリーグ監督への道 転機は38歳

(山田)そこからJリーグの監督になっていくんですね。

(寺田)ただ、簡単には監督になれません。Jリーグの監督になるには、S級ライセンスという資格が必要なんです。簡単に筆記試験だけでは取れないんですよ。2カ月ぐらい講習を受けなければいけない。海外に行ってレポートを書いたりしないといけない。

転機は38歳の時でした。山梨学院大のコーチという、ある程度安定した立場を捨ててライセンスを取りに行ったんですね。しかも、取得したライセンスを生かすあてもない中で。

結局、ライセンスを取った後も就職先はなく、甲府でサッカースクールを設立しました。クラブの規約を決めて、営業とか広報とかも全部1人でやって、園児や小学生を教える日々でした。ただ、そういう中で国内外のサッカーを研究して、自分の理論を構築していったんですよね。

(山田)「いつか自分が」って思いを胸に秘めていたんですね。

「自分が一番、中部横断道を使っているドライバーだ」


(寺田)ガイナーレ鳥取から監督就任の要請が来たのは2018年のシーズン途中、41歳の時でした。J2昇格まであと一歩まで行き、クラブからは「次のシーズンもやってほしい」と慰留されたそうですが、奥さんが体調を崩し「一番大事なのは家族なんだ」と気づき、鳥取の監督をやめました。

実は藤枝の監督をしている今も、住まいは甲府なんですよ。単身赴任せずに、毎日1時間半かけて通っています。「自分が一番、中部横断道を使っているドライバーだ」と冗談を言っていました。

(山田)今の話を聞いたら、みんな応援したくなっちゃいますね。

(寺田)須藤監督が掲げる「超攻撃的サッカー」の原点は、選手としてプレーしていた甲府時代にあるということです。当時、甲府の指揮を執っていたのが、清水エスパルス監督や日本代表コーチなどを務めたこともある大木武さんでした。彼の薫陶があって、甲府は狭いところでもショートパスを繋ぐサッカーを貫き、J1に昇格しました。「夢の劇場だった。スタジアム全体が沸く感じ。あれが忘れられないんだ」と須藤さんはおっしゃっています。

弱さを認め、褒めて伸ばす


(山田)僕も何回かお見かけしたことありますが、さわやかで兄貴的な存在ですよね。

(寺田)山梨学院でのコーチ経験が生きてるかもしれないですね。山梨学院ではBチームのコーチだったんですよ。

日本代表経験があるような指導者だと、自分がイメージ通りのプレーができたせいなのか、「なぜこれができないんだ」みたいな指導になりがちです。須藤さんの場合は、自分の経験を踏まえて「できないこともある」と弱さを認めた上で、褒めて伸ばす。

もちろん、たたいて伸びる選手もいるので、人によって指導法は変えるそうです。型にはめるのではなく、正解は人によって違うんだと。今も「選手を育てながら勝つ」という2つのタスクをこなしている。

(山田)実際に、藤枝で成長してJ1のチームに引き抜かれる選手が出てきてますからね。

懐の深さが魅力

(寺田)もう一つ。サッカーのラジオ解説をやっていたことが今の監督業に生きているとも、須藤さんは話しています。

サッカーのラジオ解説って難しい。野球なら「ツーアウト、フルベース」でリスナーに状況は伝えられますが、サッカーの場合は目の前で何が起きてるかを伝えるのは難しいんですよね。須藤監督は「見えるようにしゃべる」ことを意識していたとか。端的に、しかも的確に表現しなければならない。

須藤監督の言葉は、選手にとってもわかりやすいんですよ。ラジオの仕事で学んだ言葉の大切さが今に生きてると思うんですよね。

さらに。熱い言葉を発する人はたくさんいますが、須藤さんは人の話も聞く。

私はほかのチームも担当したことがありますが、サッカーの監督って、誰とは言わないですが、偏屈で頑固な人も多いんです。気に食わない質問とか、ちょっと的外れな質問をすると、機嫌を損ねたり、無視したり。須藤さんはそうじゃなくて、「そういう見方もあるね」と受け止める。「今日初めて藤枝に取材に来ました」っていう記者が質問しても、同じなんです。

(山田)素敵ですねえ。

欠点もあるでしょ?


(寺田)須藤さんは「現実を受け止めて、選手、スタッフの意見も吸い上げて、得た情報から最適解を抽出するのが自分の仕事だ」と常々言っています。

短期的には「J2で90分間、相手を圧倒するチームを作る」のが目標。中期的には「藤枝をJ1に昇格させる」。長期的には「日本代表監督をやって、この国のサッカーを変えたい」と。

今季の藤枝はJ2に昇格してスタートは良かったんです。ただ、主力選手がJ1クラブに移籍して、7月から9月初めまでは8戦勝ちなしの4連敗。結構厳しい時期がありました。空中分解しかけたんですが、そんな窮地でも、須藤さんは「サッカーの根本は変えない。スパイスを加えるんだ」と話していました。今は残留争いからちょっと抜け出しました。

(山田)須藤監督、すごいいい男じゃないですか!欠点はないんですか?

(寺田)欠点もあると思いますが、今日はやめておきましょう(笑)藤枝は次節、清水エスパルスと対戦します。清水の秋葉監督も熱い監督なので、両チームの指揮官の表情やパフォーマンスにも注目したら面白いかと思います。

(山田)なるほど。今日の勉強はこれでおしまい!
シズサカ シズサカ

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