LIFEライフ

SBSラジオ ゴゴボラケ

【次期衆院選に向けた静岡県内小選挙区の構図】焦点は日本維新の会の動向。野党の体制も衆院解散判断の大きな要素!?

静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「次期衆院選に向けた静岡県内小選挙区の構図」です。先生役は静岡新聞ニュースセンター専任部長の市川雄一です。(SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」 2023年11月13日放送)

(山田)今日は衆院総選挙にまつわる話ですね。

(市川)衆院議員の任期は4年間で今秋、任期の折り返しを迎えました。各党は総選挙の候補者擁立作業を急ピッチで進め、県内小選挙区の構図は固まりつつあります。与党は岸田文雄内閣の支持率低迷を懸念しつつ攻勢の機会を探り、野党は解散をにらみながら共闘を巡り水面下の駆け引きを繰り広げています。

折り返しを迎えたといっても、衆議院には「解散」がありますから、あと2年、今の衆院議員が任期を全うできるとは限りません。というか、今の日本国憲法のもとで任期満了まで衆院議員を務めたケースというのは、1976年の一度きりしかないんです。

(山田)そうなんですか。4年間やったのは一度きり。

(市川)三木武夫内閣のときでした。実は前回の総選挙は任期満了の7日前に衆院を解散しているので、任期のぎりぎりまで務めたと言えます。ただ、現行憲法下の衆院議員の平均在職日数は2年10カ月です。

(山田)ということは、任期の折り返しぐらいの時期から衆議院議員はそわそわするというか、選挙の準備を始めるという感じなんですね。

(市川)そうなんです。いつ解散してもおかしくないというのが2年の折り返しです。任期が6年で解散のない参議院と違い、衆議院が「常在戦場」、つまり、常に選挙戦を意識しなければいけないといわれる所以でもあります。

(山田)なるほど。

(市川)解散については先日、岸田首相が「年内見送り」の判断をしたとの報道が出ました。解散は首相の専権事項といわれ、首相にしか判断できないことなんですが、公には「解散しません」とははっきり言わないのが常なんです。このため、水面下で有力者にそう伝えた、という取材の積み重ねでこういう報道になるわけです。

(山田)そういうことなんですね。

(市川)静岡新聞は10月29日の朝刊1面の記事で県内の衆院選選挙区の状況を報じています。その中身について少し紹介しようと思います。

(山田)お願いします。

(市川)静岡県には衆院議員の小選挙区が8つあります。静岡1区とか静岡8区という言い方をします。2年前の総選挙は、岸田文雄首相のもとで行われた初めての総選挙だったわけですが、8選挙区中5選挙区で自民党候補が勝利しました。残りは2選挙区で立憲民主党の候補が勝ち、1選挙区では無所属議員が勝利しました。自民党は8選挙区すべてに候補者を擁立してますから、自民党にとっては5勝3敗。一応、勝ち越したものの、芳しい結果ではありませんでした。

(山田)微妙なんですね。

小選挙区で負けた人がなぜ当選?

(市川)ただ一方で、自民党の候補は小選挙区で勝てなかった残りの3人の方も当選はしてるんですよ。

(山田)ちょっと分かりにくい話ですね。どういうことなんでしょうか。

(市川)衆院選は、小選挙区比例代表並立制といって、選挙区で1人だけ当選者を選ぶ小選挙区と、政党や政治団体に投票して、得票に応じて名簿の上位から当選者を決める比例代表制を併用して行われています。少しややこしいのは、小選挙区と全国に11ブロックある比例代表の両方に立候補する「重複立候補」が認められているんですね。このため、小選挙区で敗れた候補者が比例代表で復活当選するケースがあります。

(山田)復活当選というのはそういう意味なんですね。

(市川)比例復活を決めるのが惜敗率です。惜敗率は小選挙区で敗れたものの、当選者にどれだけ肉薄したかを数字で計算したものです。比例代表の名簿順は例えば1位に複数の人を並べることができます。順位が一緒の人は惜敗率の上下で当選が決まります。

(山田)はい、はい。

(市川)つまり、小選挙区でどれだけの得票ができたか、1位の当選者とどれだけ競ったかで比例代表に重複立候補した候補者の当選が決まっていきます。

そういう制度のもとに、小選挙区で負けても比例復活で当選するケースが相次ぎ、県内でいうと、結果的に8選挙区の自民党候補が全員当選しました。このほか、静岡4区では国民民主党の候補、静岡6区では立憲民主党の候補が比例復活しています。

(山田)小選挙区で大敗すると比例復活できない可能性があるんですよね。

(市川)ただ、前回の選挙は全国的に自民党が強かったので、惜敗率がかなり低い人まで復活しました。その典型が静岡5区です。静岡5区は無所属で出馬した細野豪志さんが自民党公認候補だった吉川赳さんにダブルスコアで勝ちました。吉川さんの惜敗率は48.07%で相当低い数字でした。例えばほかの比例復活した候補を見ると、静岡3区の自民党公認候補だった宮澤博行さんの惜敗率は89.6%。静岡6区で自民党候補に負けた立憲民主党の渡辺周さんは95.7%でした。

(山田)それでも吉川さんは復活当選したんですね。

(市川)というわけで、前回の総選挙で自民党は全員当選したということで、次期総選挙も現職が立候補する流れなんですが、静岡5区だけは候補者が変わります。

前回の総選挙では無所属で当選した細野豪志さんが自民党の公認候補として立候補する予定です。5区の自民党公認候補は吉川さんでしたが、女性問題が明らかになり、離党しました。その後釜として、長年、野党として自民党と戦ってきた細野さんが自民党入りしました。なので、自民党の候補は1区から8区までもう揃ってるんです。

(山田)いつ選挙をやってもいい状態なんですね。

(市川)対する野党はというと、実はまだ決まっていない選挙区が多くあります。野党第1党である立憲民主党は、前回小選挙区で勝利した静岡3区と静岡8区は、現職がそのまま立候補します。比例復活した静岡6区も現職がそのまま出馬します。

そのほか、静岡1区、2区、7区は既に候補が決まっているので、国民民主の議員が比例復活した静岡4区と、細野さんがいる静岡5区以外は固まっています。立憲民主党と国民民主党は静岡県内では選挙協力をしようという話をしているので、静岡4区はおそらく国民民主党の現職に一本化することになると思います。なので、立憲民主党はあと静岡5区だけ決まれば、体制が整います。

(山田)なるほど。

日本維新の会が台風の目になる?


(市川)次期総選挙で台風の目になると言われているのが日本維新の会です。現状の各種世論調査では、支持率は立憲民主党よりも高い状況です。そうなると、次期総選挙で相当票を取るのではないかと言われています。

(山田)へぇー。

(市川)日本維新の会は、全国の全小選挙区で候補者を擁立する方針を打ち出しています。維新の情勢は、静岡県内では、現時点で静岡1区、3区、8区で候補者の擁立を発表していますが、残りの5選挙区でどこまで候補者擁立ができるか。ここが焦点になってきます。

(山田)野党の方も急ピッチで候補者擁立などの準備をしておかないとまずいですよね。

(市川)その通りです。解散の話は今年6月や夏の終わりぐらいにもあったかと思います。岸田首相が解散をちらつかせるのは自分の権力を維持するためというのもありますが、選挙に勝てるタイミングを見極めているということがあります。

最新の共同通信の世論調査では内閣支持率は28%と岸田政権の最低を更新しました。前回総選挙が行われた2021年10月の岸田政権の支持率は60%近くありましたから、半減したことになりますが、野党の体制が整っていないというのも判断材料としては大きいんです。

(山田)野党の体制が整う前にということですね。

(市川)それならば内閣の支持率が低くても自民党が勝てるんじゃないかということです。

野党にとっては、競合をいかに避けるか、候補者を一本化して共闘できるのかが、自民党に勝利できるかのポイントになります。10月22日に衆院と参院でそれぞれ補欠選挙があったんですが、参院補選では、自民党と、野党が支援する無所属候補の一騎打ちになり、野党系の候補が勝利するということがありました。野党が1本化すれば、自民に勝てるという事例を示したわけですね。

ただ、先ほどお話したように日本維新の会が全部の小選挙区に候補者を擁立するとなると、少なくても三つ巴になる。さらに、日本共産党が加わってくると4人の争いになります。そうなると、組織の基盤がしっかりしている自民党に有利になるんじゃないかと言われています。

(山田)難しいですよね。でも今の解説を聞くと、野党にもうちょっと頑張ってほしい感じはしますけどもね。

(市川)年内は解散がないということなので、野党にはこの間に候補者の擁立を進め、どういうふうに共闘していくのかということを考えていただきたいなとは思いますね。

(山田)とても勉強になりました。今日の勉強はこれでおしまい!

SBSラジオで月〜木曜日、13:00〜16:00で生放送中。「静岡生まれ・静岡育ち・静岡在住」生粋の静岡人・山田門努があなたに“新しい午後の夜明け=ゴゴボラケ”をお届けします。“今知っておくべき静岡トピックス”を学ぶコーナー「3時のドリル」は毎回午後3時から。番組公式X(旧Twitter)もチェック!

関連タグ

あなたにおすすめの記事

  • 「静岡県知事選挙は来たるべき衆院選の前哨戦」支援体制の構図が固まる 次の焦点は一枚岩になれるか【記者解説】

    「静岡県知事選挙は来たるべき衆院選の前哨戦」支援体制の構図が固まる 次の焦点は一枚岩になれるか【記者解説】

    SBSテレビ LIVEしずおか

  • 【衆院3補欠選挙】自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件で逆風下。東京、島根、長崎の3選挙区で岸田政権は「0勝」回避なるか?

    【衆院3補欠選挙】自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件で逆風下。東京、島根、長崎の3選挙区で岸田政権は「0勝」回避なるか?

    SBSラジオ ゴゴボラケ

  • 【岸田文雄首相と衆議院の解散総選挙】“伝家の宝刀”はいつ抜ける? 果たして解散総選挙はあるのか?

    【岸田文雄首相と衆議院の解散総選挙】“伝家の宝刀”はいつ抜ける? 果たして解散総選挙はあるのか?

    SBSラジオ ゴゴボラケ

  • 【衆院静岡5区支部長ポスト問題】細野豪志衆院議員、自民党5区支部長になる?ならない?

    【衆院静岡5区支部長ポスト問題】細野豪志衆院議員、自民党5区支部長になる?ならない?

    SBSラジオ ゴゴボラケ

  • 「解散総選挙の前哨戦」リニアも野球場も

    「解散総選挙の前哨戦」リニアも野球場も"ゼロベース" 与野党対決の様相で国政への影響は【静岡県知事選】

    SBSテレビ LIVEしずおか

  • 「無所属厳しい。逆風」自民離党の塩谷立議員が次期衆院選へ出馬意欲 ポスターにも変化

    「無所属厳しい。逆風」自民離党の塩谷立議員が次期衆院選へ出馬意欲 ポスターにも変化

    SBSテレビ LIVEしずおか

  • 【2024年は選挙イヤー】台湾、ロシア、アメリカ…世界各国で選挙が。大国の情勢は日本にも影響!押さえておきたい1年の予定を紹介!

    【2024年は選挙イヤー】台湾、ロシア、アメリカ…世界各国で選挙が。大国の情勢は日本にも影響!押さえておきたい1年の予定を紹介!

    SBSラジオ ゴゴボラケ

  • 「6月にあるのではないか」解散・総選挙にらみ空白区の候補者擁立急ぐ考え 立憲民主党静岡県連が会合

    「6月にあるのではないか」解散・総選挙にらみ空白区の候補者擁立急ぐ考え 立憲民主党静岡県連が会合

    SBSテレビ LIVEしずおか

  • 【上川陽子外相ってどんな方?】「次期首相」との呼び声も。実現の可能性は…?

    【上川陽子外相ってどんな方?】「次期首相」との呼び声も。実現の可能性は…?

    SBSラジオ ゴゴボラケ

  • 【静岡県知事選の投票率】過去には川勝平太知事が大胆発言も!全国から注目される選挙がいよいよ告示。どうなる投票率?

    【静岡県知事選の投票率】過去には川勝平太知事が大胆発言も!全国から注目される選挙がいよいよ告示。どうなる投票率?

    SBSラジオ ゴゴボラケ

RANKING