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【上川陽子外相ってどんな方?】「次期首相」との呼び声も。実現の可能性は…?

静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「上川陽子外相ってどんな方?」。先生役は静岡新聞論説委員長橋本和之です。(SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」 2023年12月5日放送)
 
(山田)今日は、上川陽子外務相の話題ですね。

(橋本)聞いたことがあるかもしれませんが、最近、岸田文雄さんの次の首相に上川さんがなるかもしれないという話が、週刊誌や一部在京紙などで取り上げられています。ネットでもよくその話題を目にします。そうしたこともあり、ちょっと上川さんの話をしようかなと思います。

(山田)お願いします。

(橋本)9月にあった第2次岸田内閣の再改造で外相になり、つい先日も韓国南部の釜山で韓国の朴振外相、中国の王毅外相と会談しました。
今、パレスチナ問題やウクライナ情勢など外交の懸案事項が多いですから、外遊や国際会議でものすごく多忙な状況にあるようです。

岸田さんの次の首相の候補として名前が上がるようになり、もし実現すると、静岡県選出の国会議員としては1956年の石橋湛山さん以来2人目になります。そして女性初の総理ということになりますから、大注目されると思います。

(山田)なる可能性もあるということですね。

(橋本)はい。なぜ上川さんの名前がここに来て上がるようになったかという話をする前に、簡単にプロフィールをおさらいします。

上川さんは静岡市出身の70歳。選挙区でいうと衆議院の静岡1区ですね。静岡雙葉中・高を出て東大に進学し、国際関係論を専攻しました。卒業後に三菱総合研究所の研究員となって、アメリカに留学し、ハーバード大学のケネディスクールというところで政治行政学修士号を取得されたということです。アメリカに行っている間に、上院議員の政策スタッフを務めていた経験があるそうです。

(山田)えーっ、すごいですね。

(橋本)その留学時代に日本の改革を進める必要性を痛感して政治家を志したという話です。帰国後の1996年、衆院選に静岡1区から出馬して落選しましたが、2000年に再挑戦して初当選しました。現在は当選7回になっています。福田、安倍、菅の各内閣と現在の岸田内閣で閣僚を務め、特に法務相には3回も就任しています。

(山田)法相のイメージが強いですよね。

(橋本)今年9月の岸田内閣再改造で外相に就任したんですけども、前任は林芳正さんという方でした。今、外交上の問題がすごく多いため、継続性が重要だということで留任するのではないかという空気だったんですが、突然、上川さんが抜擢されたという状況です。

候補に上がった背景には岸田政権の支持率低下が

(橋本)ここにきて次期首相候補に上川さんの名前が浮上している背景なんですが、一番大きなのは岸田政権の支持率低迷だと思います。岸田さんは、来年秋に自民党総裁の任期が切れます。再選を目指していて、ことしの夏頃までは「他に候補者いないよね」という感じで再選確実の雰囲気でした。ところがその後、支持率がどんどん下がって今、危険水域といわれる30%を割り込み、20%ちょっとという調査結果もあるぐらい低迷してます。

さらに、このところ自民党の派閥がパーティー収入で裏金を作っていたという話が出ているので、国民の目がさらに厳しくなっているという状況があります。

その不人気の岸田さんの下では次の選挙を戦えないという声が、当然ながら党内で高まっていく可能性があるということです。

思い出してほしいんですが、菅前首相は解散しようとしたものの結局できずに、退陣を余儀なくされ、次の総裁選には出馬せずに岸田さんが当選しました。今回も同じような流れをたどる可能性があるのではという見方が出てきています。

(山田)そうすると、次の候補の名前は出てるんですか。

(橋本)次の候補にはいろんな人の名前が上がります。これまでよく言われているのは、自民党の茂木敏充幹事長。それから、高市早苗経済安全保障担当相。この方も女性初の総理になるんじゃないかという見方があります。

それから西村康稔経済産業相。あるいは河野太郎デジタル相とか、ちょっと若いんでまだ先かも知れませんが、小泉進次郎元環境相。あとこの方もちょっと派閥を解消したので影響力が弱まってますが、石破茂元幹事長。

(山田)石破さんも、ずっと言われていますね。

(橋本)いずれもよく知られた方で、あまり新味がないですよね。岸田さんが不人気なので、「自民党は変わったよ」という感じを出したいじゃないですか。

(山田)確かに…。誰がなっても、そうならない感じがします。

(橋本)今、名前を挙げた方たちに、突出した方はいないんです。それぞれにウィークポイントがあり、「そうは言ってもこの人だよね」という皆が一致して認めるような方がいないということですね。

そうすると、もし菅前首相と同じように、岸田さんが来年秋に退陣せざるを得ないという状況になったとすると、自民党の人気を回復するために初の女性首相がいいんじゃないかという話になるかも知れません。

高市さんは保守派の論客として知られてますが、逆にちょっと政策が極端で受け入れられないという人たちが党内にも多いので、「大臣として着々と実績を積んでいる上川さんがいいんじゃないか」という話が国会議員の間からもちらほら出ている。そういう状況だと思います。

(山田)上川さんはこれだけ大臣も経験されていますし、いろんなことをやっています。今回首相候補と言われているのは、やっぱり仕事もできて人望も厚いからということなんですか?

(橋本)一つは国務大臣として手堅い仕事ぶりが評価されてるということがあると思います。法相3回と、他にも少子化担当などいろんな大臣を経て今回、外相ということで、政策通のイメージが定着しています。国会答弁や記者会見で発言しても安定していて、失言がなく、スキャンダルも聞かないですよね。

岸田政権は、不祥事で閣僚、副大臣や政務官が次々と辞めざるを得なくなったという状況がありますので、「次の首相はクリーンなイメージの人がいい」という人が多くなれば、上川さんがぐっと浮上してくるという可能性もあるんじゃないかと思います。

(山田)本来全員クリーンであるべきだと思うんですけどね。実績としてはどうですか。

(橋本)法相の時代に、オウム真理教事件の死刑囚13人の死刑を執行したということで、政界の中にも「腹の据わった政治家」だと評価している方がいます。上川さんは岸田さんの派閥の宏池会に所属しています。外相に登用したということが物語っていますが、岸田さんからの信頼も厚いということです。

「上川首相」実現にはハードルも


(山田)実際、「上川総理」ってことあるんですか。

(橋本)首相になるには自民党の総裁選で勝たなきゃいけません。上川さんは派閥の会長じゃありませんから、党内の国会議員の推薦人を得て総裁選に立候補する必要があります。

自分が派閥の票を持ってるわけではないので、票を集めなくてはなりません。岸田派というのはそんな大きな派閥じゃありませんから、他の派閥からも支持される必要があります。それが1つのハードルになります。

何より、来年秋に岸田さんが続投できない状況になってしまうことが前提の話です。さすがに岸田さんが続投というのに総裁選に出るのは無理です。岸田さんが退任するとしても、その場合は岸田さんがすごく批判されている状況ですので、仮に「後継は上川さんに」と言っても説得力がありません。

(山田)確かにそうですね。

(橋本)他派閥からも広く支持を集めるような状況が出来上がってないと、なかなか実現は難しいと思います。

(山田)そう思うと、まだちょっとハードルがありますね。

(橋本)もう一つは、上川さんは全国的にそれほど知られた政治家とは言えないということがあります。法相や外相をやって注目度は上がってます。「法相をやった人だよね」「外相をやってる人だよね」という認識を持っている方は多いかもしれませんが。

(山田)僕も地元が一緒だから知ってるという感じです。

(橋本)仕事上の露出が主で、テレビ番組で積極的にコメントしたりという感じでもないので、上川さんの人となりを知っているという国民は少ないと思います。

上川さんが首相になるという状況になったときは、自民党のピンチのときなので、自分から情報発信して国民に理解を求めなければいけません。今の国会などの状況を見て見ていると、確かに失言がなく手堅いんですが、自分の言葉で喋るということは少ないのかなと思います。あらかじめ用意したもので語ることが多く、アドリブで何かちょっと場を和ませてみたりとか、そういうのはあまりない感じなんです。

立場が人を変えることもありますから、首相になれば変わるのかもしれませんが、発信力という点ではちょっと弱いのかなと思います。そうした人を自民党の多数がピンチの党を託す首相にしようと思うかどうか、そこもハードルになるでしょう。

(山田)上川首相を実現させるためにはまだまだ必要な部分があるということですね。今日の勉強はこれでおしまい!

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