サッカージャーナリスト河治良幸
ジュビロ磐田、清水エスパルスの補強動向を読む。今、必要な戦力は？
ジュビロ磐田：外国人”助っ人”を含むアタッカーはノルマ
ジュビロ磐田はJ1に見合う戦力を整えられるか…
横内体制の2年目を迎えるが、カテゴリーがJ1に上がるということで、それに見合った戦力を整える必要がある。1年ぶりの補強解禁ということで期待も高まるが、新卒以外の補強はJ2の大分から左サイドバックの高畑奎汰、J3の讃岐から右サイドのポリバレントである川崎一輝が加入。そこにJ2ベスト11の平川怜が熊本から加わった。
その一方で”人気銘柄”とみられた上原力也の引き止めに成功したものの、右サイドバックの主力だった鈴木雄斗が湘南に完全移籍した。FWは大津祐樹が現役引退、後藤啓介がベルギーの名門アンデルレヒトに期限付き移籍。外国人FWの”ラッソ”ことファビアン・ゴンザレスも契約満了後、甲府に移籍が決まっており、FWはそもそもの頭数が足りない状況だ。
攻撃的なポジションのターゲットが国内の人気選手になると、どうしてもJ1のライバルと競合してしまい、”昇格組”の磐田には不利な部分もあるだろう。そこで獲得失敗が続けば、新体制発表やチームの始動を前に、どんどん後手に回ってしまうことを踏まえて、補強戦略を進めたい。
まだ契約更新がリリースされていない選手が全員残ったとしても、外国人枠を含む複数のアタッカーの獲得はJ1で残留以上の成績をあげるためのノルマだろう。
中盤の攻撃的なポジションに、J1でも違いを作れるタレントが欲しかったところで、J2ベスト11の平川怜を獲得した。今後の活躍次第ではA代表も狙える創造的なタレントが加わったことは大きい。
センターバックはスタメンを争える選手が一枚獲得できれば理想だ。八田直樹が引退し、梶川裕嗣が鹿島に移籍したGK陣は必ず誰か加える必要がある。
清水エスパルス：J2の2年目ならではの難しさが
司令塔・乾貴士の残留は朗報だが、主力の流出も…
プレーオフで惜しくも昇格を逃した清水はコーチから途中就任した秋葉忠宏監督が、引き続きチームを率いる。清水はJ1でプレーしてもおかしくない実力者の集団であり、J2で2シーズン目になると、補強以前に戦力維持が強化部の難しいタスクになってくる。
しかも大熊清GMが成績不振の責任を取る形で退任することが決まっており、今オフは引き継ぎと補強戦略を同時に進めていかなければならない。
現時点でも長くチームを支えたMF竹内涼が岡山に移籍。さらに2023年シーズンのJ2ベスト11に輝いたDF鈴木義宜が京都、右サイドアタッカーの中山克広が名古屋と”個人昇格”するなど、10人を超える選手の退団が決まっている。
ただ、加入が決まった選手の顔ぶれも、なかなか頼もしい。鹿島からは24歳のGK沖悠哉と甲府の中盤で抜群の存在感を示していた中村亮太朗がイン。鈴木の抜けたセンターバックには広島から住吉ジェラニレショーン、FC東京から蓮川壮大と活きの良いタレントが入ってきた。
乾貴士の残留が決まった攻撃的なポジションも最低限、ファーストセットを担う戦力は残るが、右の主力だった中山に加えてベンジャミン・コロリ（スイスのバーゼルに移籍）、神谷優太（韓国の江原FCに移籍）、サイドバックとサイドアタッカーを兼任した岸本武流（ガンバ大阪に移籍）と強力なオプションがいなくなるので、彼らに代わるタレントを入れていく必要がある。
秋葉監督はシンプルに整理して個の特長を引き出せるので、新戦力のフィットにそう多くの時間を要することはないが、J1昇格が絶対的に求められるシーズンとしては可能な限り強力なスカッドを揃えていきたい。
もちろんU-17W杯に出場した高校生のMF矢田龍之介や冬の選手権をわかせている郡司璃来（市立船橋から加入）など、若手の突き上げがチームを活性化させることは言うまでもない。
＜河治良幸＞
タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。 サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。著書は「ジャイアントキリングはキセキじゃない」（東邦出版）「勝負のスイッチ」（白夜書房）「解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る」（内外出版社）など。
タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。世界中を飛び回り、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。
