「福祉避難所」開設、想定の2割 能登地震被災7市町、施設損壊

 能登半島地震で死者が出るなど甚大な被害があった石川県内の7市町で、障害者や高齢者ら配慮が必要な人たちを災害時に受け入れる「福祉避難所」の開設が想定の2割にとどまることが20日、共同通信の集計で分かった。開設する予定だった福祉施設が損壊、断水し、施設の職員が被災、避難して人手が不足したのが主な要因。避難生活の長期化に伴う災害関連死も懸念され、宿泊施設などへの2次避難が進む中、「災害弱者」への対応が急がれる。

石川県珠洲市の避難所で過ごす高齢者=19日
石川県珠洲市の避難所で過ごす高齢者=19日

 発生から21日で3週間。関係自治体などへの取材によると、福祉避難所に入れずに必要なケアを受けられない人もいるという。2016年の熊本地震で被災した熊本市でも施設の損壊や人手不足で開設は想定の半数程度だった経緯があり、開設の難しさが改めて浮き彫りとなった。
 石川県によると、地震の死者は20日午後2時時点で災害関連死14人を含む232人が確認された。安否不明者は22人。
 福祉避難所は一般の避難所で生活に支障が出る恐れがある要配慮者らの受け入れを想定。自治体が事前に福祉施設などを指定したり、協定を結んだりして確保する。
 共同通信が輪島、珠洲、七尾、羽咋4市と能登、穴水、志賀3町に福祉避難所の19日時点の開設状況を聞き取った。87施設のうち開設できたのは19施設で、一時は計200人以上が避難した。
 24施設と協定を結んでいた輪島市は被災後、受け入れ可能な2施設を追加し、26施設のうち7施設で開設。羽咋市と能登町も各1施設を被災後に追加し、羽咋市は13施設のうち4施設、能登町は6施設のうち2施設で開設した。珠洲市では想定していた7施設全てで開設できていないが、障害者施設を要配慮者向けの避難所としている。
 他3市町の開設数は七尾市3施設(開設想定24施設)、志賀町2施設(同8施設)、穴水町1施設(同3施設)だった。
 開設が難航している理由について能登町の担当者は「天井が崩れて施設が使えない」と説明。七尾市は「職員が被災して人手を確保できない」、輪島市は「断水で衛生状態が悪化し、受け入れが難しい」とした。

 福祉避難所 一般の避難所で生活するのが難しい高齢者や障害者、妊婦、難病患者ら配慮が必要な人のための避難所。バリアフリーなど設備が整った高齢者施設や障害者支援施設、児童福祉施設などに開設され、支援を担う人員を配置する。災害対策基本法などに基づき市区町村が事前に施設を指定するか、施設側と協定を結ぶなどして災害時に開設する。阪神大震災を機に必要性が認識され、2022年12月時点で指定済みの8710カ所を含めて全国に2万5356カ所ある。一般の避難所から自治体が必要と判断した人を移す運用に加え、要配慮者は直接避難できる。

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