政治資金規正法、合意は難航必至 週内にも政治改革特別委 論点多岐、隔たり大きく

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、与野党は週内にも衆参両院に政治改革特別委員会を設置する予定で、政治資金規正法改正の議論が本格化する。岸田文雄首相は今国会中の実現を明言しているが、論点は多岐にわたり各党の隔たりも大きい。野党は事件の解明が不十分だとして追及を続ける構えで、合意形成は難航必至だ。
 自民を除く主要各党は既に改革の方向性を打ち出しており、首相は3日、自民の実務者に作業を急ぐよう指示した。
 論点に浮上しているのは①連座制の導入②政策活動費の扱い③企業・団体献金の存廃④政治資金パーティーの規制強化⑤監査機能の強化⑥政治資金収支報告書のデジタル化といった透明性向上策-など。資金管理団体で指摘された後援会組織への資金移動の在り方も議論になる可能性がある。
 このうち連座制を巡って首相は当初慎重で、党規約の改正で対応する考えだった。現行法は収支報告書の不記載などに会計責任者の罪を定めるだけで、政治家の共謀も立証が難しいとされる。
 連座制は公選法に規定があり、選挙で陣営幹部に一定の罪があった場合は当選無効になる。野党や公明党は規正法に同様の効力を持たせるよう求め、首相は2月29日の衆院政治倫理審査会で「悪質な場合に政治家本人も責任を負う法改正を行う」と方針転換した。
 一方で政策活動費は、廃止や使途公開を求める各党と自民の間で溝が深い。自民は党幹部への支出が年間10億円を超すことも珍しくなく、使途を明かす必要がない「巨額の合法的裏金」だと批判が強い。首相は政治活動の自由やプライバシーを理由に及び腰だ。
 企業・団体献金も見通せない。立憲民主党や日本維新の会は、政策決定がゆがめられるとして禁止を訴える。首相は「企業は寄付の自由を有する」と折り合わない。
 事件で悪用された政治資金パーティーは野党でもばらつく。立民は開催の全面禁止、維新や共産党は企業・団体によるパーティー券購入禁止を要求。公明は購入者の20万円超から5万円超への公開基準引き下げを唱える。
 透明性の向上策に関しては、収支報告書のデジタル化で足並みがそろう。パーティー券の代金などを現金でなく振り込みとするのも同様だ。
 政治団体の収支を監視する第三者機関の設置など監査機能の強化も多くの党が主張する。どの団体を監査対象とするかは議論となりそうだ。不正が見つかった際に連座制を適用するべきかどうかの告発権を第三者機関に与える案もある。
 政治資金制度に詳しい日本大の岩井奉信名誉教授は「国民が監視しやすい仕組みの構築は、政治家へのけん制になる。問題の抜本解決には、第三者が金の入りと出を厳格にチェックする機関が必要だ」と指摘した。

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