公費で被災者の洗濯支援、石川 能登地震の断水避難所対象に

 能登半島地震に伴う断水被害が大きかった石川県で、避難所に身を寄せる被災者の衣類をクリーニング業者が回収し、洗濯を代行する取り組みが公費で実施されていることが27日までに、内閣府と県への取材で分かった。災害救助法に基づく対応で、断水が長期化した県内5市町で実施。内閣府によると「直近10年で事例はない」といい、初のケースとみられる。関係者からは被災者支援として定着させるべきだとの声が出ている。

震災発生から3週間が経過した1月24日に石川県珠洲市の小学校で稼働した移動式ランドリー
震災発生から3週間が経過した1月24日に石川県珠洲市の小学校で稼働した移動式ランドリー

 洗濯支援の公費負担は、災害救助法で規定する被災住民への「応急救助」のうち、避難所の運営費用として扱われ、珠洲市や能登町などで対象となった。プッシュ型支援で国から避難所に送られた洗濯機が届く前や、洗濯機が届いた後も水が使えない期間などに、業者が衣類を回収し、洗濯して返す形で支援が実施された。
 過去の災害では、被災者は避難所に設置された洗濯機を使い、自らが洗濯するケースが多かった。政府は、今回も洗濯機やランドリー車を避難所に配備。洗濯に使う水も供給してきたが、送った台数などが十分とは言えず、水が通っている地域まで足を運んで洗濯するのが困難な被災者も少なくなかった。
 このため県は支援が必要と判断した。県クリーニング生活衛生同業組合などの協力を得て、2月上旬ごろから徐々に支援態勢を構築。内閣府とも協議し、公費負担の対象となることを確認した。
 長野県伊那市でクリーニング店を営む中村祐一さん(40)は、1月下旬からボランティアで避難所を回って支援を実施。石川県のクリーニング組合などにも協力を呼びかけてきた。行政の初動は遅れたと感じており「公的な支援が早期にできなかったのは問題だと捉えて、次の災害に備えてほしい」と話す。
 自宅にとどまる「在宅避難者」の洗濯を負担の対象外としていることも問題と指摘するが、県の担当者は「あくまで避難所運営の一環だ」と説明している。
 県によると、断水は地震が起きた1月1日に最大約11万戸に上り、4月26日時点で珠洲市と輪島市、能登町の計約3950戸で続いている。

 災害救助法 一定規模以上の自然災害が発生した場合に、被災住民への「応急救助」を定めた法律。避難所や応急仮設住宅の設置、衣服や寝具、食料、飲料水の提供がある。救助法が適用されると、これらの費用は市区町村に代わり、基本的に国と都道府県が負担する。避難所での洗濯機設置も対象に含まれているが、被災者個人への洗濯機供与は認められていない。

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