車の技術進化急速 次世代整備人材の養成に力 浜松に学校新設へ

 自動車業界でEV(電気自動車)や自動運転といった次世代技術の導入が急速に進む中、電子制御技術など高度な整備の知見と技術を備える人材養成ニーズが高まっている。完成車や部品メーカーが集積する浜松市には2023年4月、自動車整備士資格の最上位「1級整備士」取得を目指す養成校が新設予定。国も整備士の能力向上策に関する議論を深めている。

燃料電池車を例に、タブレット端末とつないで数値の確認作業に臨む学生=静岡市葵区の静岡工科自動車大学校
燃料電池車を例に、タブレット端末とつないで数値の確認作業に臨む学生=静岡市葵区の静岡工科自動車大学校

 静岡自動車学園(静岡市葵区)が浜松市中区寺島町に浜松工科自動車大学校の設立を予定する。同学園としては静岡工科自動車大学校(葵区)に続き、1級整備士養成課程(4年制)と2級養成課程(2年制)、留学生ら対象の国際オートメカニック科(3年制)を開設する。
 静岡市の大学校では20年度入校生から、将来の需要拡大を見据えて1級の定員を2級より多い水準に入れ替えた。自動車ディーラーとの連携でEVやハイブリッド、燃料電池車など最新自動車に触れる機会も多い。平井一史理事長は「勘や経験を重視した時代から、コンピューターで診断し、目に見えない故障を確かめる時代に移った。数年後には浜松も、1級課程の定員をさらに増やしたい」と話す。
 1~3級資格の自動車整備士は全国で約33万人で、2級が最も多い約8割を占める。現行は1級と2級が扱う現場作業に差はないとされる。ただ、24年10月の自動車車検から、自動ブレーキなど自動運転に用いられる電子制御装置の検査が導入されるなど、技術進化に応じた高い整備力が今後一層重要になる。坂井モーター(浜松市東区)では、社内で勉強会を開き、2級からのステップアップを呼び掛ける。坂井光蔵社長は「就業しながらの取得は難しいが、事業所と整備士双方の将来を見据えた意識改革が必要」と強調する。
 国土交通省はこのほど、電子制御を含めて資格体系を見直した。人材育成策についても検討を継続するという。「1級整備士の数を増やすとともに、整備士がより高みを目指せる環境づくりに取り組む」(自動車局整備課)としている。

人手不足深刻、採用難続く

 高度な知識を持つ自動車整備士養成の必要性とともに、業界では若者減少や高齢化で人手不足が深刻だ。静岡労働局によると、県内の自動車整備士の有効求人倍率(実数値)は4倍台~5倍台で推移し、採用難が続く。関係者からは「経営規模が小さい事業所は、目先の人材確保の方が喫緊の課題」との声が上がる。
 県内約3100社の整備工場などが加盟する県自動車整備振興会(静岡市駿河区)も若年世代への職業PRに力を注ぐ。小中学生の職場体験学習受け入れの継続に加え、「カードクター」「メカニック」など分かりやすい呼称を使い、業界のイメージ向上を図る。


 <メモ>日本自動車整備振興会連合会がまとめた会員企業の抽出調査に基づく2021年6月末の推計値では、全国の1~3級の整備士数の合計は33万4319人(整備要員は39万8952人)。内訳は1級1万3009人、2級27万1962人、3級4万9348人。

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