田代ダム案「東電と相談する」 JR東海社長、批判続出で見解
JR東海の金子慎社長は21日に名古屋市で開いた定例記者会見で、リニア中央新幹線工事に伴うトンネル湧水県外流出対策として提示した東京電力田代ダム取水抑制案を巡り、県有識者会議の委員から検討が不十分だと批判が相次いだことについて「(委員の)リクエストに応えられるよう東電と相談したい」と述べ、東電から資料の提供を受けた上で、案の有効性を再検討する考えを示した。
県庁で20日に開かれた県有識者会議の地質構造・水資源専門部会でJR東海は、東電が冬場に必要とする発電施設維持流量を考慮せずに渇水時にも対応可能だとする試算を提示。委員から「本当に対応可能か判断できない」などと指摘されていた。
金子社長は「工期を調整するなどの工夫をすることで、渇水期も含めて対応可能な案だ」と有効性に対する考えを維持する一方で、詳細を検討するために今後、東電から必要なデータの提供を受けたいとした。
一問一答 ダム取水抑制案「対応可能」
名古屋市で21日に行われたJR東海の金子慎社長の定例記者会見で、リニア中央新幹線工事に伴う大井川水問題に関する主なやりとりは次の通り。
―県有識者会議で東京電力田代ダム取水抑制案について検討が不十分との指摘が相次いだことの受け止めは。
「冬場の発電施設維持流量を考慮するなど、もっとデータを積み上げるべきだとの意見をいただいた。私たちが持っていないデータもあるので、リクエストに応えられるように東京電力と相談しながら対応していきたい」
―東電とはこれまでどのような協議をしてきたのか。
「こういう案(試算)を(県有識者会議に)出すということはお知らせしているが、今の段階で細かなやりとりをしているわけではない。議論を通じて案が具体化した段階で、実現可能か話をすることを想定していた」
―案の有効性に対する考えに変わりはないか。
「渇水期に取水抑制が困難な日があるとしても、トンネル工事の工期を調整したり、取水抑制のタイミングをずらしたりするなど工夫の余地があり、全体としては対応可能な案だと思っている」
―JR東海が大井川流域の駅などで配布している冊子について、有識者会議の委員から「水問題について議論し尽くされたかのような誤解を与える内容だ」との意見が出たことの受け止めは。
「流域の方々の懸念を解消していきたいという狙いで、国の専門家会議の中間報告をベースに作っている。分かりやすくしようという意図はあっても、何か変わったことを言い始めたということではない。誤解を招く書き方との指摘があれば、より良い表現に変えていきたい」