きさらぎ駅 姿消えたはすみさん モデルとされる遠鉄「さぎの宮駅」(浜松市東区)【静岡県西部 聖地巡礼!!】

 「某私鉄に乗車しているのですが、様子がおかしいのです」。2004年1月8日午後11時20分ごろ、遠州鉄道に実在する「新浜松駅」から電車に乗ったという「はすみ」さんが、インターネット掲示板「2ちゃんねる」に書き込んだ。電車は20分ほど止まらずに走り続け、遠鉄には存在しないトンネルを抜けて「きさらぎ駅」に到着したという。

 遠鉄は浜松市中心街の新浜松駅(中区)から西鹿島駅(天竜区)までの約18キロを結ぶ。もちろん、沿線18駅の中にきさらぎ駅は存在しない。はすみさんは「降りるべきでしょうか。聞いたことも見たこともない駅なのですが」と投稿した後に降車。周辺には「草原と山が見えるだけ」という。

「きさらぎ駅」のモデルになったとみられる遠州鉄道「さぎの宮駅」=浜松市東区大瀬町
 

 奇怪な体験の投稿は次々と続く。近くの駅まで車で送ってくれる人が現れたというが、様子がおかしい。「(車は)どんどん山の方に向かっています」―。この書き込み後の9日午前3時45分ごろ、「(携帯の)バッテリーがピンチです。様子が変なので隙を見て逃げようと思っています」との投稿を最後に、はすみさんは掲示板から姿を消した。

 
駅名表示の一部を「きさらぎ」に変更した遠州鉄道さぎの宮駅の看板=6月上旬、浜松市東区大瀬町
 

 一連の書き込みは話題を呼んだ。きさらぎ駅は遠州鉄道「さぎの宮駅」(東区)がモデルになったと推測され、駅を訪ねる人は後を絶たない。遠鉄の担当者は「当時からきさらぎ駅を知っていたが、これほど長い間、反響が続くとは思いもしなかった」と驚きつつ、「ぜひ、多くの人にさぎの宮駅に足を運んでもらえれば」と期待を込める。

 
 

 さぎの宮駅は新浜松駅から8駅目。赤色の車両から「赤電」の名で親しまれ、市民の通勤や通学を支えてきた遠鉄だが、最近は緑色や黄色など、さまざまなラッピング電車も登場し、車両を目当てに乗車するファンも増えている。

 
映画「きさらぎ駅」の公開に合わせて展示したギャラリー電車の車内=6月上旬、浜松市中区の新浜松駅
 

 「きさらぎ駅」はバラエティー番組やアニメ、漫画、小説にも登場するようになり、2020年のグーグル検索で「静岡県」と一緒に最も検索された語句の1位にもなった。今年は主人公の女子大学生が、はすみさんを訪ねてきさらぎ駅の謎に迫るストーリーの映画が公開され、再び話題を集めた。
 はすみさんが迷い込んだ世界とは―。18年前の書き込みに今なお、ロマンが広がる。

 

 【メモ】「きさらぎ駅」のモデルになったとされる「さぎの宮駅」は新浜松駅から電車で約20分。周辺は民家が立ち並び、「きさらぎ駅」にちなんだ切符型クッキー(9枚入り、税込み626円)を販売する御菓子司「あおい」などが店を構える。映画のロケ地にもなった遠州鉄道は6~7月、映画の場面写真を展示したギャラリー電車を設置したり、さぎの宮駅の駅名表示の一部を「きさらぎ」に変更したりする企画を実施し、人気を集めた。

きさらぎ駅にちなんだ切符型のクッキー

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