ドイツの大学研究員 浜松の楽器店を視察 日本の老舗に興味、継承の経緯や思い聞く

 ドイツのヴィッテン・ヘルデッケ大学の女性研究員ジグルン・カスパリさん(56)が22日、ファミリービジネス(創業一族による経営)研究の一環で、明治期に創業したとされる浜松市中区の「菊岡楽器店」を視察した。5代目の女性店主菊岡真知子さん(74)に継承した経緯や店の経営に対する考え方などを直接聞き取った。

店主の菊岡さん(右)の話を聞くカスパリさんと曽根教授(左)=浜松市中区浅田町の菊岡楽器店
店主の菊岡さん(右)の話を聞くカスパリさんと曽根教授(左)=浜松市中区浅田町の菊岡楽器店

 日本は創業から100年以上の“長寿企業”が世界各国に比べて多いとされる。カスパリさんは企業の名やブランドを守り維持する日本独特の家業文化やその背景に注目。ファミリービジネスや企業史に詳しい静岡文化芸術大の曽根秀一教授(45)との共同研究を希望し、約1カ月間、同大客員研究員として活動することになった。相談を受けた浜松商工会議所が、管内事業所から同店を紹介した。
 1997年に急逝した父親の後を継ぎ、三味線や琴、太鼓などの販売・修理の仕事を切り盛りする菊岡さん。「父の仕事のやり方が良かったと離れていくお客さんもいた。ただ、自分ができることをやると割り切り、助けを借りてやってきた」と振り返り、「楽器が好きという思いが店を続けられた一番の根っこ」と強調した。
 曽根教授は日本に長寿企業が多い理由の一つを「職人仕事への敬意に加えて、存続に価値を置き、身の丈に合わせた柔軟な経営」と分析。カスパリさんは「老舗企業が危機をどう乗り越えてきたかや女性経営者の存在にも関心がある」と今後の研究への意欲を語った。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞