昭和の料亭との縁を力に 静岡・呉服町火災ビルの居酒屋、青葉おでん街に和食店「照代」開業

 8月に発生した静岡市葵区呉服町の雑居ビル火災で、営業再開できないでいるビル地下の居酒屋店の経営者が、青葉おでん街(同区)に「静岡おでん」をメインにした和食店をオープンした。昭和30年代に同区車町にあった名料亭「照代」の屋号と、かつて同店で使用されていた器を譲り受け、新たな業態に挑戦する。

名店の名を冠し、青葉おでん街に開店した「照代」=10月下旬、静岡市葵区
名店の名を冠し、青葉おでん街に開店した「照代」=10月下旬、静岡市葵区
かつて料亭で使われていた器に盛られた静岡おでんとステーキおでん
かつて料亭で使われていた器に盛られた静岡おでんとステーキおでん
名店の名を冠し、青葉おでん街に開店した「照代」=10月下旬、静岡市葵区
かつて料亭で使われていた器に盛られた静岡おでんとステーキおでん

 オープンしたのは、雑居ビルで居酒屋「府中かしわで」を経営していた市川岩生さん(47)。放水の影響を受けた内装復旧や補償問題の見通しが立たない中、生活を守るために「青葉おでん街に出店してはどうか」と知人から提案を受けた。コンパクトな店舗で営業コストを抑えられる上、「おでんなら和食のノウハウを生かせる」と決断した。
 新しい挑戦を前に市川さんは、かつて和食店を経営していた母哲子さん(75)が知人から譲りうけた、料亭「照代」の器を生かせるチャンスと考えた。
 「照代」は市内で芸妓(げいこ)として活躍した故八木なかさんが経営し、当時市内に巡業に来た大相撲の横綱が立ち寄った名店。同店で使われていた、青く鮮やかに絵付けされた磁器のとっくりや、素朴な雰囲気の陶器の小鉢、大皿が手元にあり、「当時の器で自慢の料理を」と思い至ったという。
 新店舗は八木さんの親族の好意で「照代」の屋号も譲り受けることができた。八木さんの孫、昭一郎さん(73)は「名妓(めいぎ)と呼ばれた祖母の名を冠してもらえてうれしい」と話す。
 目玉メニューは、駿河牛を低温調理で柔らかく煮込んだステーキおでん。市川さんは「器の持つ伝統とおでん文化の歴史を伝えながら、新しい風を吹き込みたい」と意気込む。

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