軽EV 最適な移動追求 スズキ社長/鈴木俊宏氏【難局に挑む 新年トップインタビュー①】

鈴木俊宏氏
鈴木俊宏氏

 -2023年の経営環境をどう見通すか。
 「22年は新型コロナウイルス禍や半導体不足にプラスして急激な円安、原材料高が加わった。半導体に限らず、部品は2年程度先を見据えた取引先への発注など安定調達の体制を強化した。23年も依然先行き不透明な状況が続く。予期せぬ問題への対応力、行動力が問われる。『動』の姿勢を貫き、全社一丸で品質の良い車を1台でも多く市場に供給する」
 -軽EV(電気自動車)開発の方向性は。
 「(23年度販売予定の)軽商用EVは、トヨタ自動車やダイハツ工業も参画するCJPTなどと取り組み、スペックに関する協議や分析を続けている。見えてきたのは、まずは大都市で1日50キロ程度の走行距離を想定した短距離で使われる商用車だ。電池も適した搭載量になる。一方、今の軽自動車の顧客が何を求めるのか。違和感がない乗り替えの実現に向けて、スズキの車づくりの中で細部を見極める。ただ、原材料高騰の中、(目安の実質)100万円台の価格は、距離や使い方の仕様などを大胆に割り切らなければ難しいかもしれない。適材適所の視点が不可欠だ。普及には、充電インフラと車の両輪が鍵になる。行政を含め、将来に向けたインフラや維持への投資が必要と考える」
 -乗用車シェア50%以上を目指す主力市場インドの運営戦略は。
 「22年に事業40周年を迎え、経済伸長と合わせて今後も有望な市場だ。子会社マルチ・スズキとスズキ本体の一体化を進め、グローバルに通用するモデルを造り上げる。既にパワートレインの開発分野で着手している。協業するトヨタとは、ハイブリッド、EVを含めた技術協力を受けつつ、甘えるのではなく、スズキの良さをアピールしながら、良い提携関係を築きたい」
 -変革期に挑む地場サプライヤーと、どのように向き合うのか。
 「脱炭素対応は、即時の電動化転換というのではなく、合成燃料やエタノール対応などの合わせ技で進むと考える。スズキはサプライヤーに支えられて成長し、今がある。電動化に生かせる各社の強みは何か。技術探索などに協力し、共存共栄を図っていきたい」
     ◇
 ウクライナ情勢や新型コロナウイルス禍、欧米の利上げなど、国内外で不安定な情勢が継続する2023年。難局の中、原材料価格の高騰や賃上げといった課題にどう対応し、県内経済の浮揚につなげるか。企業・団体トップに展望と戦略を聞いた。

 すずき・としひろ デンソー勤務を経て1994年入社。専務、副社長を経て2015年から現職。浜松市出身。63歳。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞