ヤマハ発動機 脱炭素に注力 モーターや水素エンジン 研究設備を増強 四輪や船舶向け開発加速
ヤマハ発動機は、二酸化炭素(CO2)の排出を実質ゼロにするカーボンニュートラル(CN)の達成に向け、電動モーターや水素エンジンの開発を加速させている。主力の二輪以外でも、四輪や船舶、航空機への供給を見据え、研究開発設備の増強を進める。ガソリンエンジンで培った鋳造などの生産技術を生かし、脱炭素分野の市場開拓を図っていく。
本社工場敷地内に2022年5月に開設した研究開発棟では23年末までに、モーターの性能試験機や水素供給装置などの設備を整える。社内で性能評価などを行うことで、開発スピードを上げる。
同社は培った鋳造技術でコンパクトながらも高出力の電動モーターを開発。車両の設計自由度も高まるため、四輪ではまず、競合が少ない高級スポーツカーなどへの供給を模索する。スバルテクニカインターナショナル(東京)が開発中の近未来モータースポーツEVに電動モーターユニットを提供した。将来的には一般的な車種への展開も視野に入れる。
四輪以外の電動化ニーズも捉える。IHI原動機(東京)からタグボート用推進装置向けに、宇宙航空研究開発機構(JAXA)からは航空機用ハイブリッド推進システム向けに、それぞれ電動モーターユニットの試作開発を受託した。
従来の内燃機関を生かしつつ、CO2をほとんど排出しない水素エンジンにも力を入れる。これまでに水素エンジンを搭載した四輪バギーや発電機を試作し、実用化に向けた準備に余念がない。バイオ燃料などCN燃料対応の研究も進めている。
原隆AM開発統括部長は「CN対応を実現する選択肢をそろえ、内燃機関を生き残らせたい」と説明する。