全国信用金庫協会長/御室健一郎氏 地域の発展見据え伴走【難局に挑む 新年トップインタビュー⑩完】

御室健一郎氏
御室健一郎氏

 -2023年の景況をどう見通すか。
 「新型コロナウイルス禍の悪影響がようやく減衰しつつあり、地域経済はやや持ち直しの傾向がみられる。ただ、原材料高や欧米の景気後退の局面と併せて不確実性は増している。22年末には日本銀行の実質利上げ発表のサプライズがあった。国内外の金融政策や市場動向が企業業績に与える影響を注視する」
 -中小企業の経営課題と支援の方向性は。
 「原材料高、部品調達難、人材不足などの荒波の中、経営環境は依然厳しい。カーボンニュートラル(CN)や電気自動車(EV)シフトの動きが世界的に加速し、本県などの自動車産業も引き続き転換期にある。足元の資金繰りを支えながら、人材育成や販売力強化、研究開発を後押しする。ポストコロナを見据え、新分野展開など取引先を成長軌道に導く支援や創業のサポートも続けていく」
 -社会の変化が激しい中で、地域に根差した信金の役割とは。
 「少子高齢化や人口減少に伴い、経済が縮小する地域もある。さらにCN、SDGs(持続可能な開発目標)、ESG(環境・社会・企業統治)金融などを念頭に置いた取り組みも避けられない。社会経済の潮流に企業が取り残されないよう、課題とニーズを把握し、迅速な支援で応える。信金職員が使命感を持ち、共通の目標に向かって伴走し、期待を超える価値を提供する努力を継続する」
 -本業の収益力低下など金融機関を取り巻く環境は厳しい。信金の経営基盤強化に向けて必要なことは。
 「全国的には統合・再編に動く金融機関もあり、これも地域の実情を踏まえた経営の選択肢の一つだろう。ただ、あくまでも手段。地域や取引先の成長、発展にいかに貢献できるか、その追求が根幹にある。金融機関が従来業務やサービスを見直す過程で自らの変革に挑み、持続可能なビジネスモデル構築へ知恵を絞る必要がある。信金においてはサービスやシステムの共同化、共通化でコストを下げるなど『連帯と協調』の取り組みで、経営の強化を図る」

 みむろ・けんいちろう 浜松いわた信用金庫会長。2020年6月に全国信用金庫協会長に就き、現在2期目。浜松市出身。77歳。

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