サイバー防御、車産業一丸 体験や勉強会で対策推進 メーカーと部品供給網

 トヨタ系の主要部品メーカーがサイバー攻撃を受け、トヨタ自動車の国内全工場が一時停止した事態から約1年。スズキ、ヤマハ発動機の四輪、二輪完成車メーカーと関連産業が集積する静岡県の製造業界でも、サプライチェーン(供給網)全体の対策強化が加速している。支援機関が中心となり、対策が遅れがちな中小企業向けの情報提供や、攻撃の未然防止、影響の最小化に向けた現実的な対策を伝える試みが進む。

サイバー攻撃発生を想定して対応などを模擬体験した企業の参加者=浜松市中区
サイバー攻撃発生を想定して対応などを模擬体験した企業の参加者=浜松市中区

 2月中旬、浜松地域イノベーション推進機構の次世代自動車センター浜松が主催したサイバーセキュリティー対策ワークショップ。部品製造業4社から経営者とIT担当の計8人が参加。架空のサイバー攻撃事案が発生したとの想定で、被害への対処方法をディスカッションで模擬体験した。
 机上ながら、実践スタイルで経営者や管理者層を巻き込んだのが特徴。講師を務めた同センターの担当者は「一企業のセキュリティーレベルの低さが供給網全体の弱みになる。被害軽減と復旧迅速化には、事前の社内体制把握と対応手順の整備が不可欠だ」と強調した。
 セミナーに参加した中小企業の警戒意識は高い。金属製品加工業マルイチ(同市南区)は社長をトップとする社内委員会を中心に、ソフトとハード両面で対策を整備中。担当者は「全社で対策の重要性を共有しなければ」と実感を込めた。
 供給網の頂点に立つメーカー側は、日本自動車工業会などが作成したガイドラインを活用し、取引先に注意を喚起する。スズキは協力協同組合と連携した勉強会を開催し、ヤマハ発動機は昨年実施した取引先へのアンケートを通じて把握した現況を基に、必要な対策の検討を進める。
 次世代自動車センター浜松が昨年7月に会員企業に行った調査では、経営規模が小さい会社ほど対策に遅れが見られ、自社の問題としての認識が低い現状が浮き彫りになった。望月英二センター長は「“守りの投資”の捉え方ではなく、BCPの項目に含めるなど経営層と一体でできる対策から着手してほしい」と話す。センターとしても新年度は開催を拡充する考えだ。

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