FCV向け金属セパレーター 磐田に共同で実証生産設備 北欧メーカーとエフ・シー・シー

 燃料電池車(FCV)などに使われる金属セパレーター製造の「セルインパクト」(スウェーデン)とクラッチ製造の「エフ・シー・シー」(浜松市北区)は共同で、磐田市駒場のエフ・シー・シー工場内にセパレーターの実証生産ラインを設けた。セルインパクトは独自の高速プレス成形技術を関連企業に公開して日本市場開拓の足がかりにする。新領域の事業構築に注力するエフ・シー・シーは自社技術活用や事業展開の方向性を探る。

エフ・シー・シー工場内に共同で設けたセルインパクトの金属セパレーター実証生産ライン=磐田市駒場
エフ・シー・シー工場内に共同で設けたセルインパクトの金属セパレーター実証生産ライン=磐田市駒場


 セパレーターはFCVに搭載する燃料電池スタックの基幹部品。薄い板状で、発電に必要な水素や酸素を供給する溝状の流路が施されている。乗用のFCV1台には数百枚が使われているとされる。
 セルインパクトによると、同社のセパレーター製造プレス機は高さ、幅、奥行きともに3メートルと、これまでの大型設備に比べて4分の1程度とコンパクト。ステンレスなどの金属素材を金型で挟み、上部の油圧装置にためたエネルギーで高速で打ち付ける。1秒に1枚の高速成形が可能で、加工油を使用しないため、工程の短縮や金型の耐久性向上につながる。生産ライン部品を持ち込んでから2~4週間程度の短期立ち上げと稼働が可能で、量産化のニーズにも即応できるという。
 エフ・シー・シー側は、セルインパクトの成形技術が「ものづくりの製造効率を上げる」と注目し、今回の連携に至った。渕上禎史上席執行役員は「電動化の流れが加速する中で一歩先の水素社会に目を向け、自社技術がどう貢献できるか今回の実証を通じて検討したい」と語った。同社社員が8月末まで設置する実証ラインの管理などを担う。トリムや溶接など後工程の研究、検討も進める。
 欧米が主力市場のセルインパクトは、日本の自動車メーカーや水素を製造する水電解関連メーカーなどへのPRを狙う。日本法人の中川滋代表は「自動車産業が集積する浜松で、プレゼンスある企業との連携は大きなアドバンテージ」と話す。

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