文化財がそば店に 磐田の旧掛塚郵便局 レトロな雰囲気が客呼ぶ 店主の山本さん、地域再興へ意欲

 磐田市白羽の国登録有形文化財「旧掛塚郵便局」が、そば店に生まれ変わった。昭和レトロの雰囲気を極力残して昨秋オープン。地元住民や県内外の観光客で連日にぎわいを見せる。少子高齢化に伴い地方の商店街の衰退や個人店の減少が進む中、店主の山本孝太郎さん(38)=浜松市中区=は「かつて栄えていた掛塚を復活させたい」と奮闘している。

国登録有形文化財の旧掛塚郵便局を改装したそば店「蕎麦切りヤルダ」=2月上旬、磐田市白羽
国登録有形文化財の旧掛塚郵便局を改装したそば店「蕎麦切りヤルダ」=2月上旬、磐田市白羽
ガラス戸の受付窓口をそのまま生かしたカウンター席
ガラス戸の受付窓口をそのまま生かしたカウンター席
麺切りする山本孝太郎さん
麺切りする山本孝太郎さん
国登録有形文化財の旧掛塚郵便局を改装したそば店「蕎麦切りヤルダ」=2月上旬、磐田市白羽
ガラス戸の受付窓口をそのまま生かしたカウンター席
麺切りする山本孝太郎さん

 店名は「蕎麦(そば)切りヤルダ」。木造2階建ての旧局舎はモルタル塗りの石造り風。正面玄関の郵便マークや洋風の軒飾りなど、外観は1935年の建築当時の面影を残す。1階の店内には、ガラス戸の受付窓口をそのまま生かしたカウンター席もある。
 山本さんは浜松工高を卒業後、料理人を志し、関西の料亭で修業した。大阪のそば店でも学び、店長まで務めた。2年前、36歳の時に独立を目指して帰郷。古民家を改築した店も多い京都の街並みへの憧れから文化的価値のある物件を探していたところ、旧掛塚郵便局が目に留まった。
 別交渉が先に進んでいたため、一度は諦めかけた山本さん。人通りの少なさや改修にかかる多額の工事費などを理由に破談になったと聞き、思いが再燃した。「おいしいそばを出せば、お客さんは必ず来てくれる」。自信を持って契約を申し込んだ。
 店の自慢は自家製粉の十割そば。全国各地在来種から3種のソバの実を厳選。石臼びきから、手打ち、麺切りまで、山本さん一人で手がけている。
 レトロな雰囲気とこだわりのそばが話題を呼び、かつて郵便局で働いていた女性も客として来店した。山本さんは「懐かしんで来てくれたことがうれしい」と喜ぶ。
 将来は2階をギャラリースペースに改装し地域住民らの交流の場を目指す考えだ。地元の人々との出会いを経て地域活性への思いも募り、かつて港町として栄えた掛塚地区に残る当時の蔵など、地域資源を活用した町おこしも練る。「蔵を店舗として利活用するなど、挑戦する人が出てきてほしい」。掛塚の“再興”に向け、意欲をみなぎらせている。
 

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