御殿場の木育推進 森林所有者への支援を【東部 記者コラム 湧水】

 富士山麓の美しい自然に恵まれた御殿場市。市の総面積1万9490ヘクタールのうち、約56%に当たる1万931ヘクタールが森林とされ、同市らしいまちづくりを進める上で森林をどう生かすかは大きな課題だ。森を大切に守りながら、地域の特性を生かした教育など市独自のまちづくりに生かしていく取り組みが求められる。
 市は2022年4月、森林活用の要となる「ごてんば木育推進宣言」を行った。木育は木を植えるだけでなく、木と触れ合い、学びながら豊かな地域と人の育成を目指す活動とされ、森林資源の保全や地域活性化、教育の場の確保など地域課題解決につながる重要な取り組みとなる。
 活用促進の一歩として、御殿場産木材には「ごてんばっ木(こ)」の愛称とロゴマークが考案された。木育のシンボルとなる観光拠点「富士山 木のおもちゃ美術館(仮称)」は25年度の開館を目指して整備が進み、市内で新築住宅を建てる人に対する御殿場木材の柱材の贈呈、子どもから高齢者までが木を通じて交流する機会の充実、林業技術継承の講習会開催などアイデアは次々と生まれている。
 一方で市内の森林の現状はどうか。市森林整備計画の対象となる森林は3587ヘクタールで、戦後に一斉に植林された人工林が約78%と大部分を占める。しかし、木材価格の低迷や所有者の世代交代により市内の人工林の多くは手入れが遅れている。小規模な森林所有者が大半であるため、採算性の問題などから整備が進みづらい状況にあるという。
 間伐を行っていない森林は、木の背は高いものの根が成長せず、風雪害などで倒木被害が発生しやすい。山が水を蓄える力が弱まり、土砂災害のリスクも高まる。18年の台風24号では県西部を中心に、荒れた山林で倒木が相次ぎ、電線を切ったことなどにより大規模停電が発生した。
 自然災害が激甚化している今、防災面でも適切な森林管理が急務だ。木育推進では、ぜひ森林所有者への支援も充実させてほしい。植える、育てる、収穫する、使うの基本的な好循環に、学ぶ、親しむ、多世代が交流するなどの魅力ある要素が加わった御殿場らしい木育サイクルが生み出されることを期待したい。

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