旧日本陸軍戦車、里帰り 富士山麓にエンジン音 御殿場のNPO 日本の機械技術遺産継承

 御殿場市のNPO法人防衛技術博物館を創る会はこのほど、英国から18年ぶりに日本に“里帰り”した旧日本陸軍の「九五式軽戦車(4335号)」のお披露目会を同市神山の広場で開いた。修理費や輸送費のクラウドファンディングに協力した全国の支援者ら約600人が見守る中、80年前のオリジナルエンジンの重低音を富士山麓に響かせた。

展示走行や体験乗車などが行われた九五式軽戦車=御殿場市神山
展示走行や体験乗車などが行われた九五式軽戦車=御殿場市神山

 同会によると、戦車は全長4・3メートル、全幅2・07メートル、全高2・28メートル、重さ7・4トン。車両内部のメーターなどの機器まで新車同様に修復、再現され、来場者が間近で“日本の機械技術遺産”を写真撮影した。
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 製造当時のオリジナル空冷ディーゼルエンジンで走行可能な九五式軽戦車は、世界に2台のみという。式典では、同会の小林雅彦代表理事(52)の運転で広場を走行。体験乗車した東京都の会社役員中井悦朗さん(65)は「当時のままの音や振動を感じられて感動した」と感慨深げに話した。
 同会によると、九五式軽戦車は旧日本陸軍が1935年に正式採用し、日本戦車の歴史上最も多い2300台以上が生産された。国内には1台も残っていなかった。4335号はミクロネシアで地上戦を行うことなく終戦を迎え、一度日本に戻ったものの、英国人コレクターの手に渡った。同会が2019、22年の2回のクラウドファンディングで約3千人から8千万円以上の資金を集め、修理、輸入を実現させた。
 小林代表理事は「民間団体が戦車を輸入できたことは奇跡。動く状態で末永く継承するため、御殿場での公設博物館の実現などに今後も取り組む」と述べた。

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