ヤマハ発、スズキなど二輪4社が組合 水素エンジン研究で協調 脱炭素へ基礎技術を確立

 ヤマハ発動機、スズキ、ホンダ、カワサキモータースの国内二輪大手4社は17日、二輪車など小型モビリティー向け水素エンジンの技術研究組合を設立すると発表した。脱炭素につながる動力源の一つとして、各社の知見を結集し基礎技術の確立を目指す。

水素エンジンの技術研究組合設立を発表したヤマハ発動機の日高祥博社長(左端)やスズキの鈴木俊宏社長(中央右)ら=17日午前、都内
水素エンジンの技術研究組合設立を発表したヤマハ発動機の日高祥博社長(左端)やスズキの鈴木俊宏社長(中央右)ら=17日午前、都内

 「水素小型モビリティ・エンジン研究組合(HySE=ハイス)」は11日に経済産業省の認可を受け、登記、総会開催などを経て早ければ5月中に設立する。4社は2021年11月に水素エンジンの共同研究を進めることで合意。調整を重ね、協調の枠組みとして技術研究組合設立に踏み切った。
 理事長には、ヤマハ発の小松賢二執行役員技術・研究本部長が就く予定。トヨタ自動車と川崎重工業も特別組合員として加わる。規格化も視野に入れ、海外メーカーやサプライヤーにも参画を呼びかける。
 二輪のほか、軽四輪や小型船舶、ドローンなどへの活用を想定し、共同研究に取り組む。水素はガソリンに比べて燃焼が不安定になりやすい上、小型モビリティーは燃料搭載スペースが限られるなど、技術的な課題が多い。こうした課題を解決し、早期の実用化を実現するため、スズキが要素研究、ヤマハ発とカワサキが実機研究をそれぞれ主導するなど、役割分担しながら基礎技術の獲得を図る。スズキの鈴木俊宏社長は「切磋琢磨(せっさたくま)している4社が協力する前例のない取り組みで、難題を解決できると信じている」と述べた。一方、研究成果を生かした製品開発は各社の競争領域とした。
 ヤマハ発の日高祥博社長は「カーボンニュートラルを実現するには電動化を進めていかなくてはならないが、アプローチには別の選択肢も不可欠。水素はその中でも特に注目株の一つと考えている」と強調した。  「内燃機関 残したい」 4社トップら会見  水素エンジンの基礎技術確立に向けた組合設立を17日に発表した国内二輪メーカー4社。各社とも電動バイクの開発・普及を進めている中、トップらは同日の記者会見で「内燃機関を残したい」と口をそろえ、本県をはじめ日本の輸送機器産業が強みとするエンジン技術を脱炭素分野でも生かすことに意欲を示した。
 4社で世界の二輪販売の約半分を占める。市場をリードできたのは、各社が切磋琢磨(せっさたくま)してきたエンジン技術の高さが要因の一つだ。ヤマハ発動機の日高祥博社長は「水素は先人たちが磨いてきた(エンジン技術の)強みを生かせる研究領域。この技術分野を次世代にもつなげていくという使命感を持ちながら活動に取り組む」と語った。
 EV(電動車)は数多くの部品でできているエンジンが不要になるため、サプライヤーにとって電動化の進展は取引減少にもつながる。スズキの鈴木俊宏社長は「(水素の利用に)エンジン技術を生かしていくことは既存の設備を使うことができ、サプライヤーにもメリットが大きい」との認識を示した。
 ただ、水素エンジンの実用化は技術的なハードルが高い。日高社長は「本当にものになるかどうかは分からない」と本音を漏らしつつ、「水素は大きな可能性を秘めた次世代クリーンエネルギーの一つだ」として競合他社との協調体制に期待を寄せた。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞