75年遅れの卒業証書 ハンセン病元患者の石山さん(御前崎出身) 小学6年で強制退学 友人ら協力し授与式実現 

 小学6年生でハンセン病と診断され、小学校を強制的に退学させられた御前崎市出身の石山春平さん(87)=川崎市=に1日、75年遅れで小学校の卒業証書が贈られた。病気は後に回復したものの、困難の多い人生を歩んだ石山さん。授与式で多くの友人や親族、当時の同級生らが見守る中、「心の宝にしたい」と喜んだ。

75年遅れの卒業証書を受け取る石山春平さん(右)=1日午後、静岡市葵区
75年遅れの卒業証書を受け取る石山春平さん(右)=1日午後、静岡市葵区

 卒業証書授与のきっかけとなったのは昨年10月、静岡市葵区で開かれた石山さんの講演だった。卒業証書を受けていないことを知った石山さんの友人の伊東郁乃さん(64)=三島市=が御前崎市長と教育長宛てに手紙を出し、県の協力もあって実現にこぎ着けた。
 「あなたは小学校の全課程を修了したのでこれを証明します」。静岡市葵区の県総合社会福祉会館で開かれた式で、御前崎市立第一小の仁平美和子校長が卒業証書をゆっくりと読み上げ、石山さんに手渡した。仁平校長は「時を超えてお渡しできることを光栄に思う。差別のない多様性を尊重できる優しさいっぱいの学校をつくっていく」と誓った。
 小学6年の夏休みにハンセン病と診断され、2学期の始まりとともに学校を追われたという石山さん。小学校最後の日を「昨日まであった机と椅子がない。先生に明日から登校禁止だと言われた」などと振り返った。自宅納屋で4年ほど隠れるように暮らした後、16歳で自ら望んで御殿場市の療養施設に入った。数年後に病は治癒し、32歳で社会復帰した。
 会場では多くの仲間たちからお祝いメッセージが読み上げられ、合唱曲「ふるさと」も出席者で歌った。石山さんは「ハンセン病を患ったが、こうして多くの方にお祝いしてもらうことができた」と目を細めた。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞