弾丸登山抑止など課題 記念式典で知事や有識者言及【富士山世界遺産10周年】

 東京都内で22日に開かれた富士山世界遺産登録10周年の記念式典では、静岡、山梨の両県知事や有識者らが保全管理を巡る今後の課題に言及した。十分な休息を取らずに夜通し山頂を目指す「弾丸登山」の抑止や、入山者数の管理、財源の確保などが必要だとの認識を示した。

富士山から発信する持続可能な社会の実現をテーマにパネルディスカッションするパネリストら=22日午後、東京都
富士山から発信する持続可能な社会の実現をテーマにパネルディスカッションするパネリストら=22日午後、東京都

 今夏は新型コロナウイルスの規制解除の影響で登山者の大幅な増加が見込まれている。報道陣の取材に応じた静岡県の川勝平太知事と山梨県の長崎幸太郎知事は、山小屋が満室状態になることで弾丸登山が増えると懸念した。
 川勝知事は、登山口に向かう最終バスの時間を繰り上げるといった対策を説明した。その上で「今後、どのような工夫が必要か。今年の状況に応じて検討していく」と述べた。長崎知事は、山梨県が構想を描く「富士山登山鉄道」が、弾丸登山を含む来訪者の管理に役立つと主張した。
 パネルディスカッションに登壇した上智大大学院の織朱実教授は、入山者数の規制がない富士山について「今のままの観光スタイルでいいのか。登山客をどこまで受容するか議論が必要だ」と指摘した。また、適切な保全管理を続けるため、新たな財源の確保を検討すべきだと提案した。聖心女子大の岡橋純子教授は任意となっている入山料に触れ「入山前のセレモニーを実施するなど、登山者に『払ってもいい』と思わせる仕組みがあれば良い」と話した。

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