東京支社 山下奈津美
-
スポーツ義足の普及 公的支援の充実が必要【とうきょうウオッチ 取材ノートから/記者余論】
義足開発ベンチャーの代表を務める遠藤謙さん(45)と4年ぶりに再会した。前回の取材は東京パラリンピック前年の2020年。出身地の沼津市で、パラアスリート以外の障害者にもスポーツ用義足を普及する講習会を開催していた。当時は「誰もが走れる環境を大会レガシー(遺産)として残すべき」と語っていたが、残念ながら現状は「変わったという感覚はない」そうだ。 要因の一つは公的支援の不足。通常の義足は保険適用で購入補助が受けられる一方で、スポーツ用義足は全額自己負担のままだ。日常生活に必要不可欠ではないという考えなのだろうが、「走りたい」という欲求はそんなにぜいたくな願いだろうか。体育の授業に参加したり、市
-
「走る喜び 世界の障害者に」沼津出身・遠藤さん 義足アスリート支援、選手以外にも普及期待
沼津市出身の遠藤謙さん(45)が代表を務める競技用義足の開発ベンチャー「サイボーグ」(東京都港区)が海外アスリートへの支援を本格化させている。「オリンピアンに勝てる義足アスリートの誕生を目指す。一方で、足のない人たちが気軽に走りを楽しめる環境もつくりたい。両輪で進めていくことが大事だ」と前を見据える。トップ選手だけでなく、一般の障害者にも競技用義足を普及させることが目標だ。 3月初旬、遠藤さんはタイのパラリンピック委員会から支援を受ける同国の陸上選手2人と都内の運動場にいた。デンプーン・コッチャランさん(24)は1週間ほど前に来日して義肢装具士との調整を重ね、同社製のブレード(板バネ)を使
-
国モニタリング会議座長に矢野氏 川勝知事と親交 差配注目【大井川とリニア】
29日に国が初会合を開いたリニア中央新幹線の「モニタリング会議」の座長には公益財団法人産業雇用安定センター(本部・東京都)会長の矢野弘典氏が就任した。国土交通省によると、専門分野は人材育成や地域づくり。以前から川勝平太静岡県知事と親交があり、一般社団法人ふじのくにづくり支援センター(静岡市葵区)の理事長も務めている。川勝知事に近いとされる矢野氏が、会議でどのような差配をするか注目される。 座長の人選については、川勝知事が候補者の具体名を挙げるなどこだわりを見せていた。初会合後の記者会見で、国交省側は「選定理由やプロセスについて答えは差し控える」としたが、森貴志副知事は矢野氏を「静岡をよくご
-
横浜で国際ボートショー、3月21日から ヤマハ発やスズキなど215社出展
日本マリン事業協会(会長・渡部克明ヤマハ発動機会長)は21日、国内最大のマリンイベント「ジャパンインターナショナルボートショー2024」を3月21~24日に横浜市で開催すると発表した。最新のボート、ヨット、水上オートバイの展示や体験プログラムを通じてマリンレジャーの魅力を発信し、市場活性や家族連れを中心とした新規顧客層へのアプローチを図る。 会場はパシフィコ横浜、横浜ベイサイドマリーナ、八景島マリーナの3カ所。ヤマハ発やスズキなど215社が出展し、計165隻・台、総額170億円の製品を展示する。約15億円の高級クルーザーも見学できる。ボート免許や航海計器の知識を学ぶセミナーや、水難救助に使
-
川勝氏に山梨国会議員「ゴールポスト動かしている」と批判 リニア問題
自民党の中谷真一氏(衆院山梨1区)は19日の衆院予算委員会で、JR東海のリニア中央新幹線静岡工区の工事着手を認めていない川勝平太知事を「水、生態系、土と、ゴールポストを動かしているように見える」と批判した。中谷氏は経済産業副大臣だった昨年7月にも本県の姿勢を非難し、川勝知事が面会を申し入れていた。 中谷氏は、静岡工区は全て山間部だとした上で、「山梨県は明かり区間(トンネル以外の区間)があり、市街地も通る」と強調。「(静岡県は)生態系を全て調べろ、土捨て場を千年に一度の災害に耐えるところにすべきだと言っている。私たちは非常に難しい調整をしているのに、フラストレーションがたまっている」と述べ、
-
ウクライナに楽器寄贈 ヤマハ 大使館通じ歌劇場に
ヤマハは13日、ウクライナ南部のオデーサにある国立歌劇場に楽器を寄贈した。フルートとオーボエ各2本、マリンバ1台で、ウクライナ市場を担当する販売子会社が同歌劇場の希望を踏まえて選んだ。中田卓也社長が都内のウクライナ大使館を訪れ、セルギー・コルスンスキー駐日大使に目録を手渡した。 中田社長は「ヤマハは音楽の力を信じて活動していく。ウクライナの人々の心が癒やされることを願っている」とあいさつ。コルスンスキー大使は「文化は平和の象徴。戦時中にもかかわらず、武器ではなく楽器の贈呈が実現したことは重要だ。支援に感謝したい」と述べた。 同歌劇場はロシアの侵攻が続く中で公演を継続しているが、新しい楽器
-
【自民裏金事件】静岡県内“無派閥”8氏模索 当面は議連、勉強会が足場に 古巣の人脈、維持する思いも 安倍派は風当たり厳しく
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件に端を発した岸田、二階、安倍、森山の4派閥の解散により、県内の同党国会議員は10人のうち8人が“無派閥”となった。「政治とカネ」への厳しい世論を踏まえ、いずれも「仕方ない」「最低限の対応」と淡々と受け止める。当面は議員連盟や任意の勉強会を足場に地元課題の解決、政策実現を図る見通しで、古巣で培った人脈を維持したいとの声も。事件の中心となった安倍派に所属し、収支報告書への還流金不記載が発覚した議員への風当たりは厳しい。 1月22日、党の有志議員が新たに立ち上げた議連「政治(まつりごと)変革会議」の初会合。二階派に所属した若林洋平氏
-
ライダースジャケット×伝統手芸「刺し子」 革製品コンテストでグランプリ 沼津出身石橋さん
沼津市出身で都内のアパレルブランドに勤める石橋善彦さん(42)=東京都墨田区=が製作したレザージャケットが、日本最大の革製品コンテスト「ジャパンレザーアワード2023」でグランプリを受賞した。スポーティーなイメージのライダースジャケットに、伝統的な手芸の「刺し子」を組み合わせた作品。「時間やコストにとらわれず、自分が着てみたい服を作った。良いものを追求した結果を評価してもらえてうれしい」と喜んだ。 等間隔に穴が開いているパンチングレザーに刺し縫いし、袖部分に模様を施した。胴体部分は刺し子をせずシンプルに仕上げ、メリハリのあるデザインにした。ポイントは、上腕の後ろ側や肘下に取り付けたファス
-
新たな地域成長戦略支援 藤枝市長 地方創生相に要望
藤枝市の北村正平市長は1日、内閣府で自見英子地方創生担当相と面会し、同市が2024年度から始める食と農業、健康・医療を掛け合わせた新たな地域成長戦略への支援を求めた。 北村市長は、有機農業が盛んで、大手製薬会社や中核病院が立地している市の強みを生かして食や健康を軸とした新たなサービスや商品を創出する構想を披露し、後押しを求めた。 北村市長は取材に「藤枝には新たな基幹産業を生み出す基盤がある。地域産業の革新につなげ、希望を持てるまちづくりに取り組む」と話した。自見氏は「期待が持てる事業だ。先導的に推進してほしい」と応じたという。 このほか、ドローンを活用した災害時の孤立集落支援や介護認定審査の
-
牧之原市長、内閣府など訪問 道の駅、観光振興 支援要望
牧之原市の杉本基久雄市長は31日、内閣府のデジタル田園都市国家構想実現会議事務局などを訪ね、坂部地区に開業を計画している道の駅の整備や大河ドラマを契機とした観光振興への支援を要望した。 茶を中心とした地域農業の衰退を食い止めるため、道の駅を拠点にした特産品の6次産業化に取り組む構想を説明した。6月に開港15周年を迎える静岡空港の周辺振興の「集大成になる」と強調し、事業費補助を訴えた。 2025年放送予定の大河ドラマに江戸幕府老中、相良藩主を務めた田沼意次が登場するとも紹介。歴史文化を生かした観光交流事業を行うとして交付金を求めた。担当者は道の駅構想について「まさに地方創生。できる限り支援した
-
岸田首相施政方針 静岡県内国会議員、与党「意欲感じる」/野党「具体性ない」
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を巡る集中審議で先送りになっていた岸田文雄首相の施政方針演説が30日、行われた。本県の与党国会議員は政策課題解決への強い意欲がうかがえると評価した。一方で、野党側は政治改革を含むいずれの対策も「具体性がない」と批判した。 自民党の城内実県連会長(衆院静岡7区)は「賃上げの実現など、日本を大きく動かすことへの意気込みを感じた」と前向きに受け止め「国民の信頼を回復した上で、能登半島の復旧・復興、経済対策を進めていかなければならない」と強調した。リニア中央新幹線整備促進への言及も評価した。公明党の大口善徳県本部代表(衆院比例東海)は「力強い訴えだった。能登半
-
東駿河湾環状道路 西区間整備を要望 国交省に沼津市長ら
沼津市の頼重秀一市長は30日、国土交通省で石橋林太郎政務官と面会し、東駿河湾環状道路西区間(7・9キロ)の建設促進を要望した。能登半島地震で幹線道路が寸断されたことを受け、未着手の愛鷹IC-原IC(仮称、5・3キロ)の早期事業化が防災機能強化のために必要だと訴えた。 西区間と並行する国道1号は災害時の緊急輸送路に指定されているが、液状化で通行不能になる可能性がある。頼重市長は「能登半島地震では被災地へのアクセス道路が限定され、復旧復興に遅れが出ていた。西区間を整備し、ダブルで輸送路を確保しておけば安心できる」と強調した。 要望には、沼津、富士両商工会議所の会頭や沿線の自治会長、沼津市議会議員
-
訪日客の地方誘客強化 空港の受け入れ環境支援 24年度、国交省
国土交通省は2024年度、インバウンド(訪日客)の地方誘客支援を加速させる。国際線の運航が再開した地方空港で受け入れ環境を整備するとともに、食や文化などテーマ性を重視した観光コンテンツづくりに力を入れる。旅先を分散してオーバーツーリズム(観光公害)対策につなげていく。 空港の国際競争力を高めるため、手続きの円滑化や旅客動線の合理化を図る「ファスト・トラベル」を推進する。24年度予算案に15億6千万円を計上した。地方空港を中心に、国際線利用者らの混雑改善を支援する。手荷物検査を搭乗までに自動で行うシステムの導入や、富裕層が多く利用するビジネスジェットの専用動線確保にかかる費用を補助する。
-
政治資金裏金事件 自民に自浄作用働くか【とうきょうウオッチ 記者余論】
通常国会開会を1週間後に控えた19日、自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件が大きく動いた。東京地検特捜部が新たに安倍派の議員2人と、3派閥の会計責任者らを政治資金規正法違反の罪で立件した。安倍派の塩谷立座長(衆院比例東海)は記者会見で重い口を開き「国民の信頼を裏切った」と謝罪した。 岸田文雄首相が出身派閥・岸田派の解散を表明し、同じく立件された安倍派、二階派も続いた。ただ、そもそも問題視されたのは、政治資金収支報告書への不記載という法令違反を犯した政治家の順法意識や、それを可能にした現行法の欠陥、不記載の金の使い道だったはずだ。 塩谷氏は、不記載の金は「不正な使い方をされたわけではない
-
【自民3派閥立件】静岡県内野党議員 国民納得できぬ処分 解散は論点すり替え
自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件で、安倍派と二階派、岸田派の3派閥の会計責任者や安倍派の国会議員らが立件されたことを受けて、県内の野党国会議員は「真相が解明されていない。国民が納得できる処分ではない」と不満をあらわにした。 立憲民主党県連の源馬謙太郎代表(衆院静岡8区)は「会計責任者の独断で裏金を作るはずがなく、政治家の関与は明らか。金額で線引きをして、一部の議員しか罪に問われないのはおかしい」と非難した。一部派閥の解散表明は「論点のすり替えだ」と指摘し、通常国会で裏金の使い道など真相を追及する構えだ。 国民民主党県連の田中健会長(衆院比例東海)は「トカゲのしっぽ切りだ。民間
-
地震臨時情報の普及啓発に全力 森気象庁長官が就任会見
17日付で気象庁長官に就任した森隆志氏(60)が同日、同庁で記者会見に臨んだ。南海トラフ巨大地震発生の可能性が高まっていると評価された場合に発表される「臨時情報」について「全力で普及啓発に努める」との考えを示した。 具体的には、オンライン講演会の開催▽漫画冊子の配布やSNSによる情報発信▽ホームページでの解説の充実▽気象台を通じた自治体への説明▽地域の避難訓練や防災研修会を通じた住民への説明―などに取り組んでいくとした。 臨時情報は気象庁が2019年5月に運用を始めて以降、発表事例はない。内閣府の昨年7~10月のインターネット調査では、被害想定地域の住民約1万6千人のうち臨時情報を「知っ
-
南海トラフ沿い大地震 発生確率「30%程度」前年評価据え置き
政府の地震調査委員会(委員長・平田直東京大名誉教授)は15日、活断層や海溝型の地震の長期評価(1月1日時点)を発表した。南海トラフ沿いでマグニチュード(M)8~9クラスの巨大地震が発生する確率値はいずれも前年評価を据え置き、10年以内で「30%程度」などとした。 20年以内は「60%程度」、30年以内は「70~80%程度」。日本近海のプレート境界で起きる海溝型地震を30年以内の発生確率で4段階に分けたランクも、最もリスクの高い「3」のまま変わらない。 調査委は「日本で地震の発生確率がゼロの場所は存在しない。(確率値に変化がなくても)日頃から耐震補強や家具固定などの対策を講じることが重要だ
-
リニア開業「27年以降」に変更認可 国交省 JR東海の工事計画
国土交通省は28日、リニア中央新幹線の品川ー名古屋間の工事完了予定時期を「2027年」から「27年以降」に変更したJR東海の工事実施計画を認可した。鉄道局の村田茂樹局長が同日、丹羽俊介社長に認可書を手渡した。 村田局長は「静岡工区のトンネル工事着手にめどが立たない状況。大井川の水資源や環境保全に関する(国の)有識者会議の報告書を踏まえ、県や関係市町の理解と協力が得られるよう尽力してほしい」と要請した。丹羽社長は「早期開業へ全力で取り組む。静岡工区着工に向けて、双方向のコミュニケーションを進めていきたい」と応じた。 申請書では、静岡工区の遅れを理由に工事の完了時期を変更した。これまで「27
-
南海トラフ救援計画改定 新被害想定踏まえ
内閣府は2024年度、南海トラフ地震防災対策推進基本計画の改定を踏まえ、発災直後の救援体制をまとめた応急対策活動計画を見直す。新たな被害想定を基に救援に必要な人員数や物資量などを再検討し、的確な被災地支援につなげる。 22日に閣議決定された24年度予算案に、日本海溝・千島海溝地震の応急対策活動計画の改定費と合わせて2300万円を盛り込んだ。 現行の計画は、12年8月公表の被害想定に基づき、消防、警察といった応援部隊の派遣や物資調達、インフラ供給などに関する具体的な対応を定めている。内閣府は24年春の南海トラフ地震防災対策推進基本計画改定に伴い、10年間の減災対策を反映させた被害想定を新た
-
古里静岡の魅力語らう 市ゆかりの首都圏在住者ら 都内で交流会
静岡市は19日夜、同市にゆかりのある首都圏在住者らを集めた交流会を都内で開いた。新型コロナウイルス禍を経た4年ぶりの開催で、約350人が参加。トークショーや特産品を使った料理の提供、市の施策紹介を通じて古里の魅力を確認した。 難波喬司市長は冒頭のあいさつで、市政の目指す姿を「社会の大きな力がうまく働くよう下支えする」と説明し、「皆さんと一緒に魅力を高めていきたい」と呼びかけた。食がテーマのトークショーは、本山茶を栽培する斉藤茶園(葵区)の斉藤祐子さん、都内で飲食店「静岡おでん ガッツ」を営む市川徳二さん(駿河区出身)、清水区で「三保サーモン」と「三保松さば」の養殖に取り組む「日建リース工