夏の伊豆観光にぎわい戻る 「明るい兆し」高まる期待 まだ不透明感も

 静岡県内有数の観光地、伊豆半島は新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類に移行後、初めてとなる夏の観光シーズン本番を迎えた。各地でイベントがコロナ禍前の状態になり、にぎわいが戻りつつある。観光関係者の間ではインバウンド(訪日客)を含めた来客数の増加に期待感が高まる一方、物価高や猛暑、感染者増などの懸念材料もあり、先行きは見通せないとの声もある。直前の宿泊予約や少人数での利用といった傾向も見られ、関係者は動きを注視する。

海水浴客でにぎわう大瀬海水浴場=16日、沼津市西浦江梨
海水浴客でにぎわう大瀬海水浴場=16日、沼津市西浦江梨

 3連休中日の16日、沼津市西浦江梨の大瀬海水浴場は一時、駐車待ちの車が出るほど混み合い、多くの家族連れが海水浴やダイビングを楽しんだ。宿泊施設を営む大瀬海浜商業組合の高野貴好組合長(52)は「幸先は良いが、この後の予約は芳しくない。まだ様子見だろうから期待はしすぎない」と冷静に受け止める。コロナ対策として昨年まで行った区画の設置や検温などは取りやめた。市内から訪れた会社員川口映枝さん(47)は「気兼ねなく遊べる。県外への旅行も予定している」と声を弾ませる。
 熱海市では15、16日に同市最大の観光イベント「熱海こがし祭り」がコロナ禍前の状態に戻して開かれた。市観光協会によると、コロナ禍前の2019年より多い約8万人が訪れたといい、担当者は「活気が出てきた。昨年とは全く違う」と期待感を示す。
 一方、市内の宿泊業関係者は「宿泊人員は19年と比べ8~9割にとどまっている」と話し、「部屋の稼働率は悪くないが、1部屋当たりの人数が少ない」と明かす。夏休みはこれまで親子3世代での予約が多かったが、感染を気にかける高齢者が同行を断念する傾向があるという。猛暑による旅行意欲の低下も心配する。
 伊豆の国市南江間のドライブイン「いちごプラザ」土産部門の担当者は、物価高による買い控えに頭を悩ませる。「5月の大型連休明けあたりから顕著」と指摘し、「(売り上げが)例年並みになればいいが」と不安を語る。
 コロナ禍などの影響で直前に宿をネット予約する傾向が強まり、出足が読みづらい側面もある。西伊豆町で宿泊施設を営む県ホテル旅館生活衛生同業組合の加藤賢二理事長は宿泊業の人手不足を指摘しながらも「試行錯誤して対応する。訪日客の増加や客の活気は感じる。明るい兆しは見える」とトップシーズンの8月に期待する。

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