脱炭素重視し工業炉設計 エコム(浜松市浜北区)/高梨智志社長【キーパーソン・最前線】

 産業用工業炉の設計、開発、製造の産業システム事業と祖業の保守サービス事業を手がけ、3月に名古屋証券取引所メイン市場に上場した。脱炭素社会の実現へ最先端の熱技術を駆使し、工業炉からの二酸化炭素(CO2)排出削減ニーズに対応する。

高梨智志社長
高梨智志社長

 -事業の内容と強みは。
 「全体売上高の7割が四輪、二輪など輸送機器向け。工業炉の産業システムの特徴は、受注の前段で行う『ヒートトライアル』と呼ぶ加熱実証テスト。業界トレンドの省エネ、省時間、省スペースを踏まえた上で、熱源や温度、加熱方向、スピードなど最適な熱処理の条件を導き出し、オーダーメードの設備を提案する。綿密な実証に基づく独自の受注体制は顧客との信頼構築につながり、他社と差別化できる点だ。保守サービスは約530社のメンテナンスを請け負い、他社製品比率は約8割を占める。メンテナンスを入り口に新規設備受注につなげている」
 -上場の狙いは。
 「調達資金を活用し、昨年新設した本社に設置しているヒートトライアルエリアのテスト環境を拡充し、件数増加を目指す。上場後にマイクロ波など2基を導入して11基体制に広げ、テスト件数の増加を図っている。知名度向上に伴い、エンジニアなど優秀な人材獲得にもつなげたい」
 -今後の事業展望は。
 「モーターや電池関連などEV(電気自動車)に関連した受注が増えつつある。世界の潮流を逃さず、部品製造に対応する新規設備の投資需要の取り込みに力を注ぐ。省エネバーナーや遠赤外線ヒーターなど、自社オリジナルの熱源機器の開発販売も強化する。保守サービスでは全国進出や業務提携を利用したさらなる事業拡大を検討する。上場初年度の2023年7月期の売上高は約23億円を見込むが、近く30億円への引き上げを目指して成長させる」
 (浜松総局・山本雅子)

 たかなし・さとし 島津製作所を経て2007年エコム入社。09年から現職。52歳。三重県出身。

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