新型コロナ 静岡県が独自警報発令 発熱外来 混雑じわり 「感染のピーク見えづらい」

 新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類に移行してから8日で3カ月になる。週ごとの感染者数は前週を超え続け、静岡県独自の感染拡大警報が発令された。医療機関が担う発熱外来では一部で混雑が始まり、医療者は患者の急増を警戒する。

抗原検査を行う古川敬芳院長(右)。この日は午前の診療で4人の陽性が確認された=5日、静岡市葵区のしずおか葵の森クリニック
抗原検査を行う古川敬芳院長(右)。この日は午前の診療で4人の陽性が確認された=5日、静岡市葵区のしずおか葵の森クリニック


 静岡市葵区の「しずおか葵の森クリニック」では警報発令翌日の5日、開院直後から受診希望の電話が相次ぎ、抗原検査で4件の陽性が確認された。同クリニックが7月に診たコロナ感染者数は6月の2倍以上になり、最近は初診患者で陽性が確認されるケースも増えているという。古川敬芳院長は「せき止め薬が減っている。感染拡大のピークが見えづらい中で、十分量が確保できるか」と心配する。
 保健所別で現在、最も感染者が多いのが御殿場保健所管内。定点医療機関1カ所当たりの直近1週間の患者数は45・50人と、警報基準値の34人を大きく超える。御殿場市医師会の斎藤昌一会長(斎藤医院院長)は「一部の発熱外来が観光客など市外から来た患者の発熱対応に追われていて、1日当たりの患者が相当数に上っている」とし、「少しずつ医療逼迫(ひっぱく)を感じている。夏のイベント後に来院し、陽性になるケースが目立つ」と注意を促している。
 過去の流行では、警報基準値を超えると患者が急増する傾向がみられた。県などは流行が「第9波に入った」との認識を示し、今後急増する可能性はあるものの、現時点ではまだ増加の度合いは鈍い。静岡市葵区の内科医は「受診や検査をせず、覚知されない感染者が一定数いるのではないか」とみる。「週の初めに発熱し、出勤し、週末になってせきが治らないと来院した患者がいた。その後、家族が陽性になった」との事例を明かす。「5類移行後、感染が疑われるのに検査を拒んだり、薬だけ欲しいと言ったりする患者が増えている。基礎疾患がある人たちの不安を思うと、ルーズだと感じる」
 県感染症対策専門家会議委員の小清水直樹医師(藤枝市立総合病院副院長)は「重症化のリスクは下がりつつある半面、後遺症のつらさや感染力の強さの点は風邪とは違う」とし、「密集する場など場面を選んでマスクを着用し、体調不良なら休むといった基本事項を意識して」と呼びかける。
 (社会部・大須賀伸江)

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