いなば第1工場 87年の歴史に幕 清水区で閉所式 元従業員ら、思い出次々と

 静岡市清水区由比北田のいなば食品(稲葉敦央社長)は10日、87年間稼働した第1工場の閉所式を同工場内で行った。従業員としてマグロの身さばきなどを担った地元の主婦らも招待され、昼食会では思い出話に花が咲いた。同工場跡地には本社機能や開発部門、社員食堂などが入る地下1階、地上4階建ての最新式のビルが建つ予定。

87年間稼働した第1工場の閉所式であいさつするいなば食品の稲葉社長=静岡市清水区由比北田
87年間稼働した第1工場の閉所式であいさつするいなば食品の稲葉社長=静岡市清水区由比北田

 式典では1936年に完成した第1工場の歴史と戦前戦後の日本や静岡を取り巻く出来事を対比させながら、稲葉社長がこれまでの同社の歩みを振り返った。
 戦時中は食糧不足で戦闘機のフラップを製造する工場にならざるを得なかったことや、円とドルの変動相場制移行による急激な円高により、いなば食品は一時廃業の危機を経験したことも紹介した。「87年間風雪に耐え、閉所式を迎えられた。なくなるのは寂しい、このままにしたいと今日も思いながらここに来た」と稲葉社長は述べた。
 副社長を務めた大下正剛さん(90)も登壇し「最初の7年間は第1工場で働いた。当時はマグロ、カツオ、ミカンの缶詰が三本柱だった。手作業だったので熟練の工員さんが頼もしく見えた」と振り返った。
 式典では献花台に稲葉社長や大下さんらが花束をささげたり、半世紀以上も使った殺菌釜の前で記念撮影したりした。昼食会では、ドローン撮影した第1工場の全景や、過去の社内行事の写真などが次々に上映され、第1工場をしのんだ。
 (清水支局・坂本昌信)

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞