魚の残さ“リサイクル” 半世紀前からSDGS実践 見学受け入れ本格化 焼津の飼料製造会社

 焼津市田尻の飼料製造業「焼津ミール」が古くからSDGs(持続可能な開発目標)を実践していた企業として、関係者の間で注目を集めている。1965年の設立当時から、本来は捨てられる魚の残さを原料に、飼料や肥料、油を製造している。昨年末にホームページを設けて事業内容を発信したところ、中学校や高校、大学などから問い合わせが相次いだ。魚の町のリサイクルを発信しようと、今年から施設見学の受け入れを本格化した。


 同社は焼津市や静岡市清水区、御前崎市に立地する水産加工会社や鮮魚店が廃棄するカツオ、マグロなどの頭、尾、骨といった残さを専用の車両で回収。同社工場に運び入れた後、砕いて加熱し絞るなどして飼料用魚粉や液体肥料、マグロ油、濃厚エキスを製造している。製品は水産関連会社や研究所に出荷され、ニワトリや養殖の魚の餌、茶園の肥料、粉ミルクなど幅広い用途で利用されている。
 2年前に入社した長房泉専務は現場を見て「焼津ではSDGsという概念ができる前から既に実践されていた」と驚いた。こうした取り組みを全国に発信すべきと考え、昨年12月にホームページを開設。SDGsの実践例として学びたいと、今年に入って地元の中学校や高校、団体が見学に訪れた。
 このほど東京海洋大海洋生命科学部(東京都)の学生が製造施設を見学した。学生たちは施設前に置かれた回収済みのカツオやマグロの残さを見た後に、飼料、食用油脂の製造工程について同社社員の説明を受けながら学んだ。製造された飼料用魚粉を手に取ったり、製造途中の油のにおいをかいだりして、リサイクルの現場を肌で感じ取っていた。
 今後、地元の小中学校を中心に受け入れ体制を強化していく。長房専務は「子どもたちが魚の町焼津の良さを知ることで、ふるさとへの誇りにつながれば」と期待する。
 (焼津支局・福田雄一)

 焼津ミール 焼津市内の業者により設立した企業組合が始まり。かつて焼津では魚の残さを天日干しにして、絞って肥料にしていたが、量が多く悪臭も発生することから、1965年に脱臭装置を備えた処理工場を同市中里に設置した。2001年、同市田尻の水産加工団地内に工場を移転。02年に株式会社に変更した。

 

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