学生起業家の卵、浜松で集え! コミュニティー発足 静岡県内市町初の試み

 浜松市は今月、起業を目指す市内の高校、大学、専門学校生のコミュニティー「Doer・Tribe(ドゥア・トライブ)ハママツ」を発足させた。若者の起業への挑戦心を醸成する静岡県内市町初の試み。経済成長を続ける米国や中国などでは若い起業家によるスタートアップ(新興企業)が推進力になっていて、日本は育成で後れを取ってきた。市は世界で活躍し、次世代の国内経済を支える人材の輩出を目指す。

起業コミュニティーの発足イベントで先輩起業家と対話する学生たち(左)=8月上旬、浜松市中区のFUSE
起業コミュニティーの発足イベントで先輩起業家と対話する学生たち(左)=8月上旬、浜松市中区のFUSE


次世代の経済担い手 輩出へ
 8月初旬に中区のスタートアップ支援施設「FUSE(フューズ)」で開かれた発足イベントには、静岡大や静岡文化芸術大などの学生約20人が参加し、IT企業「チャットワーク」創業者の山本敏行さんらと対話した。既に具体的な起業の構想を描いている参加者もいて、対話は白熱した。
 静岡大大学院工学専攻2年の柴田圭佑さんは、大気に排出される熱を蓄えて有効利用し、環境負荷を抑える技術を研究中。一時は就職活動をして企業の内定も得たが、「自分が目指す社会課題の解決に力を注ぎたい」との思いから研究に戻り、起業を本気で目指し始めた。学内のグループ「しずはま起業部」の部長も務め、今回の市のコミュニティーに「多様な立場の人と関わり、自分の世界を広げられそう」と期待する。
 浜松いわた信用金庫が運営するフューズが約7カ月間の講座を組み、目標の明確化と経営の知識習得を図る二つのプログラムを提供する。受講者は市内のシェアオフィスで仲間や先輩起業家と一緒に活動し、来春の成果報告会で各自の事業案を発表する。
 市は2019年度からスタートアップへの手厚い支援策を設け、4年間で80社の起業を後押しした。販路を国内外に広げ、株式公開を見据える有望企業も生まれている。ただ、経営者は大手企業からの独立組や他地域からの転入組が目立ち、地元の学生が起業に挑戦するケースは少ない。
 起業はリスクも伴うだけに、就職して家庭を持つとハードルが上がる。在学中なら仲間も作りやすく、全国では地方都市や大学が学生ベンチャーを後押しする動きが広がりつつある。武蔵野大アントレプレナーシップ学部(東京都)の伊藤羊一学部長は「地域を成長させるために、起業家精神に富んだ若者の存在が不可欠」と指摘する。
 (浜松総局・宮坂武司)

 

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