閉業のホテル改装 静岡の「ニューマスターチ」 “昭和の香り”そのままに再生

 静岡市葵区駒形通の通称「しあわせ通り」に面し、昭和レトロな雰囲気で静岡県内外のファンに長年親しまれてきたビジネスホテル「マスターチ」が新型コロナウイルス禍で閉業し、今年3月下旬にホテル「ニューマスターチ」として生まれ変わった。市内のゲストハウス「ヒトヤ堂」が運営を担い“昭和の香り”が漂う建物の内装はそのままに、浴場を読書スペースに改装するリノベーションを施した。世代を問わず幅広い利用客が訪れ、人気を博している。

昭和の香りはそのままに改装して再出発した「ホテル ニューマスターチ」=静岡市葵区駒形通
昭和の香りはそのままに改装して再出発した「ホテル ニューマスターチ」=静岡市葵区駒形通
浴場を改装した読書スペース「おふろ文庫」
浴場を改装した読書スペース「おふろ文庫」
昭和の香りはそのままに改装して再出発した「ホテル ニューマスターチ」=静岡市葵区駒形通
浴場を改装した読書スペース「おふろ文庫」


「懐かしく安らぐ場に」浴場読書室や日替わり喫茶
 「女ゆ」と書かれたのれんをくぐると、浴槽の周囲やサウナ室に文庫本や絵本が並ぶ。お湯に漬からない読書室「おふろ文庫」に改装するアイデアは、浴室の活用策を模索する中で生まれた。昭和の昔ながらの造りが残る浴場の床には赤いじゅうたんを敷き、浴槽にはクッションやテーブルを置いて読書をしながらくつろげる空間に変えた。
 ヒトヤ堂の村松佐友紀代表(31)が、建物を買い取った大阪市の不動産会社から相談を受けたのは2022年3月ごろ。建物に可能性を感じ、運営を引き受けることにしたという。ホテル内の一つ一つ異なる部屋の構造や照明器具など可能な限りそのまま生かした。村松代表は「建物の造りが面白くて前所有者のこだわりを感じた」と振り返る。
 ロビーのある1階には日替わりの店主が飲食を提供する喫茶室を併設。3人の店主がコンセプトの異なる営業を行う。「喫茶コマガタ」を週4日開く鈴木駿太さん(33)は「古いホテルを新しい形態で運営するのは面白そうだと引き受けた。ここは街中と全然違う時間が流れている」と魅力を語る。
 新装開業直後は満室が続いた。出張や大会遠征など従来の利用以外に、SNSで情報を得てレトロに魅力を感じた大学生のグループや若いカップル、旧ホテルの根強いファンらが訪れている。村松代表は「このホテルの懐かしい雰囲気でみんなが安らいだ気持ちになってくれれば」と願う。
 (社会部・吉田史弥)

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