ペットの感染症 他県と情報共有、届け出制度ない現状に対策 人にうつるケースも

 マダニの媒介で感染し、人の致死率が25%を超えるとされる重症熱性血小板減少症候群(SFTS)。静岡県は西日本から広がってきた感染地域の東端に当たる注目エリアで、本年度も感染者が出ている。ペットなど動物から人にうつる人獣共通感染症だが、動物に関しては公的な届け出の制度がないため、県獣医師会静岡支部が他県の組織と連携し、動物の感染情報の共有に乗り出した。

ペットの感染症情報共有
ペットの感染症情報共有

 同支部は7月から「獣医療ネットワーク」として、動物の感染情報の集約を静岡市内で始めた。対象の動物はイヌとネコ、感染症はSFTSを含む20種類で、獣医師は自院の郵便番号とともにシステムに入力する。東京農工大感染症未来疫学研究センター長の水谷哲也教授(ウイルス学)が日本医療研究開発機構の支援で開発し、今春から稼働したシステムで、千葉県、福井県、石川県など5県の獣医師会が参加している。マダニを運ぶ野生生物は鳥も想定される。県域を越えた各地の情報を共有することが重要だという。
 SFTSは2011年に中国で確認され、西日本から徐々に広がってきた。県内での初感染例は20年8月、人ではなく、県西部で飼育されていたネコだった。21年、県中部で初めて人への感染が確認されたケースも動物からの感染が疑われている。3月までに愛玩動物はイヌ2例、ネコ12例が確認されている。
 ペットが散歩中などにウイルスを保有するマダニにかまれて感染した場合、飼い主が唾液や排せつ物の処理をして感染する可能性がある。しかし、動物に関する情報提供は各獣医師の任意となっているのが実情だ。同会の杉山和寿副会長(静岡市清水区)は「家族であるペットの健康維持や、人の予防のため、システムを通じた情報共有の意義は大きい。県内の全支部に働きかけたい」と意気込む。
 各地でマダニの調査を行っている県環境衛生科学研究所(藤枝市)によると、人の発症例より先に、タヌキやイノシシからウイルス遺伝子や抗体が検出されるなどしてきたという。同所職員の小野田伊佐子さんは「(こうした情報の共有は)前例のない地域などでは特に、効果的な注意喚起につながる」と話す。
 (社会部・大須賀伸江)

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