浜松「空の移動」に熱視線 スズキ/空飛ぶクルマ製造協力 ハマキョウ/ドローン配送視野

 ドローンなどの無人航空機や「空飛ぶクルマ」の開発や実装に向けた動きが進む中、輸送機器産業に携わる企業が多い浜松地域で、次世代エア(空)モビリティに関連したビジネス参入の機運が高まっている。官民連携組織「市モビリティサービス推進コンソーシアム」にも、空関連の企業の加入が増加中。世界に誇るものづくり技術や人材などの基盤を軸に、将来のエアモビリティ産業発展の可能性に期待が集まっている。

スズキはこれまでの四輪や二輪、船外機に加えて、新たに空の領域として「空飛ぶクルマ」の製造に協力する(同社提供)
スズキはこれまでの四輪や二輪、船外機に加えて、新たに空の領域として「空飛ぶクルマ」の製造に協力する(同社提供)


新事業創出へ期待感  小型車の量産技術を持つスズキ(浜松市南区)は、空飛ぶクルマを開発するスカイドライブ(愛知県)と協業し、2024年春にも磐田市内のスズキグループ工場で3人乗り機体の製造開始を目指している。「四輪・二輪、船外機に続く、空領域の将来の事業化を見据えた種まきをしていく」と経営企画室の大石浩二グループ長。開発・製造への協力を通じ、将来は主力のインド市場での事業連携にもつなげる。
 クラッチ製造大手のエフ・シー・シー(同市北区)は昨年末、小型ガスタービン動力を活用したドローン向けハイブリッド発電機を開発する新興企業「エアロディベロップジャパン」(東京)に出資した。開発サポートやメンテナンス、海外販路の分野で協力する方針。EVシフトなど構造変化の中、新規事業の一つとして活路を見出す。
 物流事業者のハマキョウレックス(浜松市南区)は、「ラストワンマイル」の配送対策の一つにドローン活用を挙げ、対応する子会社を設立した。既に中山間地の医薬品運搬で実証実験を行うなど準備を進める。
 市によると、スズキと遠州鉄道、市が共同幹事を務め、異業種連携によるモビリティサービスを検討するコンソーシアムの会員は113社(10月上旬時点)。産業用の無人ヘリコプターやドローンを製造販売し、県内のエアモビリティ事業で先駆者のヤマハ発動機(磐田市)をはじめ、空の事業に関連する企業は20年度末時点の7社から急拡大し、県内外24社まで広がった。
 9月公表の国のデジタルライフライン全国総合整備計画案には、ドローン航路の先行地に浜松市(天竜川水系)が盛り込まれ、実装に向けたインフラ整備の追い風になりそうだ。
 ドローンに特化したベンチャーキャピタルで6月にコンソーシアムに参加した「DRONE FUND」(東京)の役員高橋伸太郎さんは「次世代エアモビリティの実装には開発製造、運航、周辺サービスを含めた産業エコシステムの形成が不可欠。自動車を軸に築いた産業構造や市が先進的に進めるスタートアップ支援、スマートシティ構想の試みと合わせ、浜松がその拠点となる可能性は十分にある」と注目する。
 (浜松総局・山本雅子)

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞