サックス奏者・須川展也 デビュー40周年 故郷浜松に音で恩返し

 浜松市出身のサックス奏者須川展也がことし、デビュー40周年を迎える。演奏技術への評価はもちろん、名だたる作曲家による委嘱作品は世界中に広がり、サックス界をリードしている。「浜松の充実した音楽的環境によって今の自分がある。音で恩返ししたい」。3月にアクトシティ浜松(同市中央区)で記念コンサートを開くのを前に、故郷への思いを語った。

還暦祝いとして門下生から贈られた特注の赤いサックスを手に、活動を振り返る須川展也=2023年12月、浜松市中央区のアクトシティ浜松
還暦祝いとして門下生から贈られた特注の赤いサックスを手に、活動を振り返る須川展也=2023年12月、浜松市中央区のアクトシティ浜松


 サックスとの出合いは中学校の音楽の授業。ビゼーの「アルルの女」を鑑賞した時、「天から降ってくるような美しく透明な音色」に心を奪われた。浜松北高への進学を条件に父親にサックスを買ってもらい、学業の傍ら、東京へレッスンに通って専門性を高めた。
 東京芸術大に進むと、クラシックの世界ではサックスは他の管楽器に比べて歴史が浅く、広く浸透しているとは言い難いことを痛感。作曲家への委嘱を始め、チック・コリアやファジル・サイ、坂本龍一、西村朗らによるレパートリーを増やしてきた。これまでに35カ国以上で公演。「どこに行っても音色の多様さに驚かれる。その反応に『そうそう、これだよ!』とうれしくなる」と笑う。
 新型コロナウイルス下の自粛期間に、妻でピアニストの小柳美奈子と「須川家おうちライブ」と題して動画配信に挑戦。公演を再開した時には「演奏できる場所と聴いてくれる人がいることに感謝した」と同時に、「浜松まつりに向けて1年間こつこつ準備するように、逆境も晴れ舞台への準備期間と前向きに捉えられた」と自分の中にある“やらまいか魂”を再認識したという。「浜松では子どもの頃から祭りのお囃子[はやし]などで音を楽しみ、あちこちで開かれる演奏会によって音楽家へのリスペクトが自然と育まれる」。浜松で過ごした日々が、音楽活動の礎になっている。
 記念コンサートは自身が所属するサックス四重奏団「トルヴェール・クヮルテット」の演奏や、2007~20年に常任指揮者を務めた「ヤマハ吹奏楽団」との共演など、唯一無二のプログラムで臨む。「祭りのような楽しいステージにする。聴いてくださる方のパワーを受け取って、さらに次の10年へ向かいたい」と言葉に力を込めた。
 (教育文化部・鈴木明芽)
       ◇
 「須川展也デビュー40周年コンサート」(静岡新聞社・静岡放送後援)は3月31日午後3時開演。問い合わせは浜松市文化振興財団<電053(451)1114>へ。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞