一体感高め 着実に進歩/スズキ社長 鈴木俊宏氏【変革力 新年トップインタビュー①】

 ―2024年3月期の連結業績は最高益を見込む。経営環境をどう見通すか。

鈴木俊宏氏
鈴木俊宏氏

 「昨年は為替の円安や原材料価格安定による効果が大きく、半導体不足を補う調達態勢も整った。値上げなどの影響を含め予想を上方修正した。ただ、為替で数字が膨らんでいるところもある。実力値をわきまえてやっていく。今年はウクライナ問題や中東情勢、足元の商戦の慎重さを含め、そう簡単に一本調子ではいかない。『歩』の姿勢を意識し、各部門が協調して目標へ着実に歩みを進める。組織に技術、グローバル営業の統括を置いて横串を刺し、一体感を高めていく」
 ―今後の電気自動車(EV)投入への対応は。
 「確かにEVの流れはあるが、一方でドイツが購入補助金を停止するなど変化もある。ここ数年中に計画する車への影響は少ないと思うが、以降は売れ方を見て、投入時期を戦略的に考える必要はある。スズキも販売店には少なくとも充電器を設置して生活で使える環境を整え、意見交換しながら次のステップに進む」
 ―昨年ダイハツ工業の認証検査問題が発覚した。業界の問題としてどう向き合うか。
 「当社も過去の燃費や検査の不正を忘れることなく、変わろうと取り組んでいる。(昨年改定の社是に込めた)『お客様』をそれぞれの仕事で意識し、真摯(しんし)に車を売ることに尽きる」
 ―製造協力するスカイドライブ社の「空飛ぶクルマ」など、スタートアップとの連携のあり方は。
 「空飛ぶクルマはまだ未知数。25年の大阪・関西万博を目標にチャレンジする。連携の対象分野は限定していない。協業する価値はしっかり見るが、事業におけるお客さまに対する意識など、その思いが大事だ」
 ―主力市場インドにおける子会社マルチ・スズキとの開発などの一体化の方向性は。
 「設計だけでなく、生産技術、IT、営業など多様な分野でインドと日本を行き来し、出向、駐在の形で交流する組織を構築していく。これから新車の立ち上げはインドが中心になっていくだろう。協力して最先端の車や工場をつくりあげるため、一体化はどんどん進める。今年はSUV(スポーツ用多目的車)をはじめ着実に販売を伸ばし、市場開拓を強化する。人材の育成も今後のインドでの発展のキーポイントになる」
 (聞き手=浜松総局・山本雅子)

 すずき・としひろ 1994年入社。専務役員、副社長などを経て2015年から現職。64歳。
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 新型コロナウイルス禍の制約が緩和し、静岡県内の景気は緩やかな回復傾向が続く。深刻な人手不足や物価高、海外経済の減速など懸念材料も残る中、経済を確かな成長軌道に乗せるには企業の変革力が鍵を握る。経営者、団体トップに戦略と展望を聞いた。

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