主力の競争力向上練る ヤマハ発動機社長/日高祥博氏【変革力 新年トップインタビュー④】

 ―2024年の経営環境をどうみるか。

日高祥博氏
日高祥博氏

 「新型コロナウイルス禍で吹いていたアウトドアレジャー需要への追い風はもうないとみているが、二輪車やマリン製品はコロナ前の19年より若干良い市場が多くなると思っている。23年は電動アシスト自転車とロボティクスが苦しんだ。電動アシスト自転車市場はプラス成長だが、欧州の取引先が過剰在庫気味のため、新年も低水準の生産が続くと覚悟している。ロボティクスは生成AI関係で受注があり、そこが底上げしてくれている。従来の受注も含め、今年下期から回復するとみている」
 ―今年は25年からの次期中期経営計画の検討が本格化する。
 「社長になって6年間、次の柱になる電動アシスト自転車とロボティクス、新規事業への投資を積極的に進めてきた。それを止める訳ではないが、売上高の8割以上は二輪車とマリンが占める。二輪車でいうと電動という新しい商品も入ってきている。主力事業の状況を虚心坦懐(たんかい)に分析した上で、競争力を高めていくことを次期のメインテーマにしたい」
 ―人材の確保にどう取り組むか。
 「少子高齢化がボディーブローのように効き、国内では多業種で人手不足が深刻な問題になっている。われわれも相当苦しい。電動化をはじめ新しい知見を社内に取り込もうと、ハイレベル人材の中途採用に一生懸命取り組んでいる。人材の流動性が高い首都圏にハブを持つため、横浜市に先端技術や新規事業の開発に取り組む新拠点を設け、5月から稼働する予定。ものづくり、販売・マーケティング、開発にデジタル技術を採り入れるための社員教育にも力を入れている。適切な賃上げもしたい。今春闘ではインフレ率以上の賃上げを考えている」
 ―警察庁は最高出力を4キロワット以下に抑えた排気量125ccバイクを原付免許で運転できるようにする方針。
 「50ccはガラパゴスな商品。グローバルでは125ccが最小のコミューターになっている。国内では25年から新たな排ガス規制が適用されるため、50ccを電動モデルに置き換えようと思っていたが、まだ価格が市場に合わない。25年までに新しい原付一種相当のモデルを投入する予定だが、国内生産は考えていない。われわれは世界中で125ccを何十種類も作っている。その中から日本人の体形に合った機種を選んでいく」
 (聞き手=磐田支局・八木敬介)

 ひだか・よしひろ 1987年入社。MC事業本部第1事業部長、企画・財務本部長などを経て2018年から現職。愛知県出身。60歳。

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