鈴与社長/鈴木健一郎氏 人が集まる業界へ変容【変革力 新年トップインタビュー⑤】

鈴木健一郎氏
鈴木健一郎氏

 -景気の先行きをどう見るか。
 「日銀の金融政策や為替に左右されると思うが、内需は底堅い。米国の景気がもう少し回復してくれば輸出関連産業は好影響を受けるだろう。期待したい。中国経済は見通せない面はあるものの、2024年は23年よりは良くなる可能性が高い」
 -「24年問題」への対応は。
 「物流業は人が支えている社会インフラ。その維持には人が集まらないとならない。人を集めるには魅力的な業界にならないといけない。魅力的な業界に変容しないと社会インフラは維持できない。私の認識では24年問題は、基本的には法律によって、顧客と物流の『需給関係』が変わるということだ。わが社ではドライバーの雇用や車両の発注など、顧客から必要とされる供給力の確保について先手を打って対応してきた。今後は業界全体で適正運賃を実現し、従業員が金銭的にも報われることで魅力的な業界を作らねばならない。業界全体で取り組まないと、24年問題の真の解決にはつながらない。顧客にもこの点、理解を願いたい」
 -働き方改革やグループ戦略をどう進めるか。
 「魅力的で人が集まる会社でないと、競争優位は保てない。社員の人生をより豊かなものにすることは、会社にとっては競争優位を保つ戦略的な取り組みでもある。鈴与では『ウェルビーイング』という言葉を合言葉にしている。グループ企業については、個々の『自立』がキーワード。『シナジー(相乗効果)』は戦略にはならず、最優先すべきは自立と考える」
 -清水港や静岡市の活性化をいかに進めるか。
 「清水、静岡は少しずつだが活力を失っている。県外、国外の人を引きつけるような場所になるよう投資を続けることはわれわれの責任と自覚している。JR静岡駅前で鈴与グループの再開発ビルを建設中だが、今年以降もいろいろ計画している。清水港の日の出地区にある伊豆石を使った古い倉庫群を改装し、観光資源とすることも検討課題に上がっている」
 -清水エスパルスをいかに支えるか。
 「これからも変わらず支えていく、ということに尽きる。JR清水駅東口の再開発は多くの合意形成の下進めていく課題だと当社としても認識している。対外的な発信も協調しながら行っていくことが重要だ」
 (聞き手=清水支局・坂本昌信)

 すずき・けんいちろう 日本郵船を経て2009年常勤取締役。15年11月から現職。静岡市出身。48歳。

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