全国信用金庫協会会長/御室健一郎氏 中小「伴走」地域活性へ【変革力 新年トップインタビュー⑨】

御室健一郎氏
御室健一郎氏

 ―景気をどう見通すか。
 「新型コロナの感染症法上の5類移行で昨年から、社会経済活動は回復基調で推移している。景気は総じて前向きな状況にあると実感している。一方、円安の長期化や中国経済の先行き懸念など不確実性は残る。日銀の金融政策変更の動向も注視する。『金利のある世界』になることは、金融機関の原点に戻り、正常化に向かっていくということ。上昇局面の影響をシミュレーションするなどして備える」
 ―厳しい経営環境にある中小企業の支援をどのように進めるべきか。
 「コロナ禍を経験したことで、苦境に立ったお客さまの経営課題解決に向けて、より深く伴走支援をしていく覚悟ができた。信金職員は金融を通じて地域、社会に貢献するとの使命感を持ち、継続的な支援に臨んでほしい。まずは取引先の工場、倉庫にしっかり入ること。現場把握を徹底することで本質が見えてくる。実質無利子・無担保の中小向け融資『ゼロゼロ融資』の返済もピークを迎える中、物価高や人手不足などが深刻で、全国的には飲食など商業系に影響が出ている。いかに支え、地域の産業を盛り上げられるかを考えていく」
 ―地域で信金が果たすべき役割は。
 「変革への意欲を持ち、スピード感を持ってチャレンジしていく姿勢が大切。中小企業の賃上げは時間がかかるが、やはり目標を決めて乗り越える努力をしていかないといけない。EV(電気自動車)シフトや脱炭素への対応はまだドラスチックな変化はないが、取引先が変化の波に対応して、新しいビジネスに挑戦できるようお客さまの目線で支援する。スタートアップ活動拠点を核にした支援も、一例として全国に紹介していきたい」
 ―将来の人口や事業所の減少が課題となる中、信金の経営基盤強化も重要だ。どう取り組むのか。
 「効率の良い経営にはデジタル化推進や人工知能(AI)活用も一策だが、まだまだ難しい点もある。再編・統合の議論は目的やビジョンがしっかり合致してこそ。全国でみれば、農漁業や工業、観光分野などその地域に根差した資金需要があり、地道に掘り起こし、支援につなげるべきだ。能登半島地震で、被災地に立地する信金の状況の全容は把握できていないが、今こそ254信金が加盟する全信協のネットワークを生かして支えたい。改めてBCP(事業継続計画)対策強化も呼びかける」
 (聞き手=浜松総局・山本雅子)

 みむろ・けんいちろう 2020年6月に全国信用金庫協会会長に就き、現在2期目。浜松いわた信用金庫会長。78歳。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞