清水港海洋文化施設 整備計画遅れ 静岡市“仲裁組織”設置 SPCと東海大 調整難航

 清水港の海洋文化施設「海洋・地球総合ミュージアム」の整備計画全体に大幅な遅れが出ている問題で、事業者グループが作る特定目的会社(SPC)と魚類の展示などで業務委託を結ぶ予定の東海大の調整が難航している。発注者の静岡市は両者の協議が円滑に進むよう新組織を立ち上げ、“仲裁”に乗り出した。同港には来年度、過去最高約100隻の国際クルーズ船が寄港する。早期完成で相乗効果を期待する地元経済界の期待も背景にある。
静岡市が2026年4月の完成を目指して清水港に整備中の海洋文化施設「海洋・地球総合ミュージアム」の完成予想図(市提供)
 新組織は「海洋・地球総合ミュージアム展示アドバイザー会議」。1月27日に東京都内で初会合を開いた。今後は「陸水」や「沿岸・浅海」「深海」など五つの展示エリアごとに部会を設置。東海大に加え海洋研究開発機構(JAMSTEC)、産業技術総合研究所の研究者数人が参加し、急ピッチで展示魚類の選定を進めていくことになった。年度内に2回目の全体会合を開く予定だ。
基本設計策定までの三つのステップ
 SPCと同大の業務委託契約は、市を含めた3者が整備運営事業基本合意を結んだ1年前に速やかに行われるはずだった。2023年3月に有料入館を終えた同大海洋科学博物館で培ったノウハウを新施設に生かすことが同大には期待されたが、関係者によると、業務委託契約の前提となる魚類の選定は「教育と集客」のはざまで揺れ動いているという。
 駿河湾にいる千種類の中から魚類の選定が終わるのは数カ月後。業務委託契約後にSPCは基本設計を完了させるため、26年4月のオープンは1年以上遅れる可能性もあるとみられる。
 (清水支局・坂本昌信)
早期完成に期待の声  「海洋文化都市を目指す清水にとって、世界に開かれた海の玄関口に建つ施設。早期完成を願う」。そう話すのは商業施設エスパルスドリームプラザ運営会社の大井一郎社長だ。同社は地元本社の鈴与グループの一角で、鈴与は海洋文化施設の土地1970平方メートルも寄付している。地元経済界の期待は高い。
 建設予定地は国際クルーズ船が発着する岸壁とは至近。市海洋文化都市政策課の担当者は「クルーズ船の乗客を最初に迎える施設になる。地元への経済的相乗効果が発揮できる」とする。
 関係者によると、23年春の選挙で施設整備をけん引してきた田辺信宏氏から難波喬司氏に市長が変わり、一時的に魚種選定などSPCと東海大の協議がストップした時期があったとされる。「最初の出遅れが響いた」と話す関係者もいる。
 地層などの学術的な展示も重視する意見と、生体展示を重視する意見のすれ違いも続いたという。ある関係者は「市発注の工事で、市のリーダーシップを期待したが、PFI事業であることを理由にSPCと東海大の議論に市が積極的に絡まなかったことも遠因」と指摘した。

 静岡市清水区の海洋文化施設整備 「民間資金活用による社会資本整備(PFI)」の手法で2026年4月に完成予定の市の施設。SPCが基本設計中で、設計の前提となる学術コンテンツの集積などで市と覚書を交わし、SPCとも業務委託契約を結ぶはずだった東海大とSPC側の調整が難航。現状でも7~8カ月程度の計画の遅れが生じている。総事業費約240億円のうち建設費100億円は03年の静清合併後最大。

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