半世紀展示のサンショウウオ…実は希少種⁉ 32歳研究員の違和感から判明 川根本町の資料館

 川根本町の「資料館やまびこ」などで半世紀近く展示されていたサンショウウオの標本が南アルプスなどに生息する希少種「アカイシサンショウウオ」だったことが19日までに、ふじのくに地球環境史ミュージアム(静岡市駿河区)の岡宮久規主任研究員(32)の調査で分かった。「アカイシサンショウウオ」が新種として発表される26年前の1978年に採取された個体で「ヒダサンショウウオ」と紹介されていた。

アカイシサンショウウオだと判明した標本=4月中旬、川根本町の「資料館やまびこ」
アカイシサンショウウオだと判明した標本=4月中旬、川根本町の「資料館やまびこ」
アカイシサンショウウオの標本を調査する岡宮久規主任研究員(左)と鈴木正文さん(川根本町提供)
アカイシサンショウウオの標本を調査する岡宮久規主任研究員(左)と鈴木正文さん(川根本町提供)
アカイシサンショウウオだと判明した標本=4月中旬、川根本町の「資料館やまびこ」
アカイシサンショウウオの標本を調査する岡宮久規主任研究員(左)と鈴木正文さん(川根本町提供)

 岡宮主任研究員は「(同種は)分布や生活史に不明な点が多く、貴重な資料になる」と説明した上で、今回のように後に新種として知られる個体が別の既知種として記録されている事例は多いと指摘。「自然資料を長期間、適切に保管することの意義があらためて示された」と喜んだ。
 きっかけは昨年9月、静岡県や研究機関で構成する「南アルプス学会」の活動で岡宮主任研究員が同資料館を訪れた際、標本から受けた小さな違和感だった。「ヒダサンショウウオにしては体が少し小さい」。サンショウウオやカエルを専門に研究してきた岡宮主任研究員は、他にも顔つきや尾の形がアカイシサンショウウオの特徴に合致することに気づき、町に調査への承諾を求めた。
 調査の結果、上顎の内側にある「鋤骨(じょこつ)歯列」が、同種に顕著な幅広く浅いU字形であることが分かり、アカイシサンショウウオと特定した。同種は、環境省レッドリストで絶滅危惧1B類(近い将来における野生での絶滅の危険性が高い)に指定されている。
 標本の保存に貢献し、調査にも協力した同資料館の職員鈴木正文さん(75)は「まだ種類が判然としない標本もいくつかある。ホルマリンの液交換など傷まない工夫を今後も続けていきたい」と意気込んだ。
(島田支局・白鳥壱暉)

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