危機管理面で手腕発揮 独自色 市民に浸透なるか【検証 中野浜松市政1年㊦】

 元日の夕方、浜松市中央区で新年の集まりに出席していた中野祐介市長(54)は、能登半島地震の発生を受けて即座に携帯電話を取った。石川県で最大震度7、市内でも震度3を観測。土砂崩落などによって道路の寸断も予想される。担当部署に、中山間地域などの道路状況を緊急点検するよう即座に指示を出した。

大雨による土砂災害現場を視察した中野市長(右)=2023年6月上旬、浜松市浜名区
大雨による土砂災害現場を視察した中野市長(右)=2023年6月上旬、浜松市浜名区

 多くの孤立集落が生じた能登半島は浜松市天竜区の中山間地とも地形が重なる。約1週間後の定例記者会見では「浜松でも孤立集落は大きな問題。避難所の備蓄品や防災資機材を強化する」と表明。大枠が固まっていた2024年度当初予算に急きょ、7500万円を追加し、中山間地域に非常食や飲料水、携帯トイレなどを拡充整備した。
 就任来、災害対応など危機管理面でスピード感を発揮する中野市長。23年6月の台風2号接近に伴う大雨では被害現場を視察後、数日で補正予算に災害復旧費50億円を追加した。市幹部は「緊急事態の対応能力はすごい」と実感を込める。
 行政経験豊富な実務型として手腕を見せるが、発信力とリーダーシップを誇った前市長と対比されることもいまだに少なくない。元官僚のイメージとはかけ離れたフットワークの軽さや、表敬訪問受け入れ時のウイットに富んだトークも市民には知れ渡っていない。「早く『中野カラー』を見たい」と独自色を期待する声も大きくなっている。
 ただ、当の本人は「パフォーマンス的なことをやろうとは思っていない」と冷静だ。2月に発表した初編成の24年度当初予算の会見では前市政から恒例だったキャッチフレーズの命名を控えた。「キャッチーな言葉でフォーカスする方法もあるが、自分は『魂は細部に宿る』という考え。全部を見てほしい」と語り、市政運営の方向性を説明した。
 昨年5月の就任初の定例記者会見で市政運営の独自色を問われた際には「市民にとって必要なことをやっていくことでじわじわと『中野カラー』が出てくると思っている」と中長期的視点に立って施策を進める必要性を説き、理解を求めた。
 任期2年目に入る中野市長。市民が少しずつ「カラー」を実感できるのか。これからの発信力と実効性が問われる。
 (浜松総局・宮崎浩一)

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞