失意乗り越え不屈の歩き 競歩・川野(御殿場南高出)パリ五輪内定 混合団体「金」への切り札に

 35キロ競歩がパリ五輪種目から消えて1年。決して思い描いた道ではなかったが、川野将虎(旭化成、御殿場南高出)が2度目の五輪にたどり着いた。26日に男女混合団体代表に内定。世界選手権2大会連続メダルの主戦場を奪われた25歳は、転向した20キロでも個人出場を逃した失意を乗り越え、新種目で悲願の金メダルを狙う。

日本選手権20キロ競歩男子で4位になった川野将虎。新種目の男女混合団体でパリ五輪に内定した=2月、神戸市
日本選手権20キロ競歩男子で4位になった川野将虎。新種目の男女混合団体でパリ五輪に内定した=2月、神戸市

 「日本の競歩の歴史は50キロの選手が築いてきた」。50キロが最後に行われた東京五輪で6位入賞し、後継の35キロでも2022年世界選手権で銀メダルを手にした川野は、そんな先達への思いを胸に日本の長距離競歩を支えてきた。だが、昨年4月にパリ五輪で35キロの不実施が決定。「長い距離こそ競歩の魅力が伝わるのに。(距離変更は)悔しい」と一時は目標を見失いかけたという。
 それでも、昨年の世界選手権で2大会連続のメダルとなる「銅」。20キロの日本勢がメダルなしと完敗する中、「競歩王国」の意地を見せると、そこから半年で20キロに挑戦。2月の日本選手権で4位に終わって個人出場の望みが絶たれたが、「もう混合団体しかない。五輪は五輪、狙っていく」と不屈の精神力で歩き続けた。
 フルマラソンと同じ42・195キロを、男女2人で約10キロずつ2度歩く混合団体。まだ未知数ながら、スピード、スタミナ、回復力など競歩の全ての要素が求められる。50キロから20キロまでを経験し、どんなに苦しくなっても食らい付く川野にうってつけとも言える。
 個人20キロから混合団体までは中5日と日程が厳しく、男子は重複出場しない。各国の選手層が問われる一戦で、日本競歩の伝統を継承してきた第一人者が頂点への切り札となる。
 (運動部・山本一真)

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