移り変わる光 色で表現【浜名湖花博2024 花が作る景色 ㊤浜名湖ガーデンパーク編】

 浜松市中央区の2会場で開催中の「浜名湖花博2024」。2004年に開かれた花博の20周年を記念し、6月までの期間中、各会場に新設、再整備された庭や花壇が美しい姿を見せる。現場を訪ね、花が織りなす風景を専門家の視点で解説してもらった。今回は浜名湖ガーデンパーク編。(生活報道部・西條朋子)

 園内の最奥に広がる「印象派庭園花美[はなび]の庭」は、04年の花博でフランスの印象派画家クロード・モネのジヴェルニーの自宅の庭を再現したのが始まり。閉幕後は都市公園に引き継がれ、刻々と変化する自然の躍動感を植物で表現してきた。長年管理責任者を務める佐原宏康さん(62)が案内してくれた。
「夕陽の花壇」を案内する佐原宏康さん。鮮やかな黄色の花々が日暮れの始まりを表す=浜松市中央区の浜名湖ガーデンパーク内「花美の庭」
花の庭  庭園内の「花の庭」は、100カ所を超える花壇が整然と並ぶ「整形式フランス庭園」。まず目に飛び込んでくるのは、ジャーマンアイリスやラナンキュラスなど、咲き誇る明るい黄色の花々。「日暮れの始まりを表現した、夕陽の花壇です」
 小道を歩くにつれ、オレンジ色の「夕映え」に変化し、次第に彩度が下がって紫などが混じった「黄昏[たそがれ]」へ。やがて黒色のサトイモの葉や黒いチューリップなどが妖艶な雰囲気を醸す「夜」に行き着く。
 モネの「セーヌ川の朝」から着想した「無彩色の花壇」は白系の花のほか、白っぽい「銀葉」や赤黒い「銅葉」の植物を配し、早朝の澄んだ空気感を表現している。
 植栽は、異なる植物をランダムに植える「混植」。複色や中間的な「ニュアンスカラー」の花が、色と色の間を自然につなぐ。「黄色とオレンジのグラデーションが美しい黄金葉アカシアは、実際に光が当たっていなくてもキラキラした光を感じさせる」と佐原さん。
 花の庭の中央にある、シンボルのバラのアーチは、間もなく最も美しい時季。「パリ郊外の公園花壇」をイメージし、頭上の多彩なバラと左右に配された控えめな色彩の花々が互いを引き立て合う。

水の庭 ぐるりと池を巡りながら観賞する「水の庭」。水面の反映も庭の構成要素  花の庭の奥には一転して、池をぐるりと巡る回遊式の日本庭園「水の庭」が広がる。太鼓橋の上に紫や白のフジの花びらが降りしきり、水辺にキショウブが咲く。植栽は、日本や中国原産の植物を中心に原産地の風景を意識する。佐原さんは池の端から庭園を見渡し、「ここから見ると視界の6割は水面。水に映った空や植物の色も合わせ、全てが庭を構成する要素になっている」と説明した。

ローズガーデン 自然の姿見せる生態展示 「生態展示」を取り入れて整備したローズガーデン。自生する環境の中で咲くノイバラも見られる  園内の新エリア「新感性ローズガーデン×R(コラボローズ)」は、さまざまな園芸品種とその歴史を紹介してきた「百華園」を一新。世界中で多種多様に発展してきたバラの生育環境を、他の植物との組み合わせで見せる「生態展示」を取り入れた。
 バラと日本をテーマにした区画では、原種のノイバラやサンショウバラなどを、自生地の環境の中で紹介。山野草との共演や、花木に巻き付いて可憐[かれん]な花を咲かせる姿が楽しめる。
 佐原さんは「花は単なる展示物ではなく生き物。人は花とともに生き、さまざまな形で花をめでてきた。その多様な情景を園内で体感してほしい」と話す。

佐原さんから一言  目指したのは、美しさだけでなく、癒やしや喜びを感じられる風景づくり。心も体も安らぐひとときを過ごしていただけたらうれしい。

 さはら・ひろやす ガーデンディレクター、湖西市在住。浜名湖ガーデンパーク会場の花修景(花による景色作り)計画責任者。花博周年事業の計画、実施に継続的に携わる。

浜名湖ガーデンパーク会場  浜名湖花博は浜名湖ガーデンパーク会場(浜松市中央区村櫛町)で6月2日、はままつフラワーパーク会場(同区舘山寺町)で6月16日まで。ガーデンパークでは庭園デザイナー石原和幸さん監修の記念庭園「汽水園」など多彩な花と緑にデジタル技術を駆使した展示を加え、花のある豊かさを提案する。
 

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