トヨタ未来都市「てこに活性化」 静岡県知事選、両候補が訴え

 トヨタ自動車が裾野市で着工した先端技術の実証都市「ウーブン・シティ」。世界中から注目されるプロジェクトを生かし、企業誘致や産業振興などの効果を広域にもたらせるか。任期満了に伴う静岡県知事選(20日投開票)で、4選を目指す無所属現職の川勝平太氏(72)と、前参院議員の無所属新人岩井茂樹氏(53)=自民推薦=の両候補はともに、ウーブン・シティをてこにした地域の活性化を訴える。

ドローンを使った農薬の試験散布。裾野市はウーブン・シティ計画に合わせ、民間の最新技術を活用したまちづくりを進める=11日、同市
ドローンを使った農薬の試験散布。裾野市はウーブン・シティ計画に合わせ、民間の最新技術を活用したまちづくりを進める=11日、同市

 建設地の裾野市はトヨタと連動し、デジタル技術で地域課題を解決する未来都市づくりを加速させる。田園が広がる裾野市北部の農地2カ所で11日、JAなんすんがドローンを使った農薬の試験散布を実施した。作業の省力化を図る技術を生産者にPRした。
 市は先進技術を用いた民間ビジネスを呼び込み、まちづくりにつなげる構想を進める。同JAなど70以上の企業・団体が参画。避難所の混雑状況を可視化するシステム導入や、人工知能(AI)が衛星写真で耕作放棄地を見分ける実証実験にも取りかかった。石井敦企画部長は「新産業や新サービスの起爆剤にする」と鼻息が荒い。
 一方、新ビジネスの実現には、法の規制が立ちはだかる可能性もある。市は県の「ふじのくに防災減災・地域成長モデル総合特区」などを活用した規制緩和も視野に入れる。石井部長は「スピード感を持って壁を突破するため、県は主体者、国とのパイプ役として継続支援してほしい」と求める。
 周辺市町もウーブン・シティに期待感を高める。御殿場市は環境分野の企業立地などを促す「エコガーデンシティ構想」との相乗効果を狙う。杉山真彦未来プロジェクト課長は「周辺地域には先端技術を持つ企業の進出も見込まれる。ニーズをつかむには県との連携が不可欠」と強調する。
 県は計画を受け、庁内に部局横断の対応チームを発足。トヨタに医療・教育面での連携を提案したという。総合政策課の担当者は「トヨタと情報交換し、次の展開を検討していく」と説明する。ファルマバレーセンターも実証都市でのパートナーに応募し、共同研究を目指している。
 企業経営研究所(長泉町)の中山勝理事長は「ウーブン・シティで生まれる新技術を県東部、本県に取り込むチャンス。迅速に対応するのは市町では難しい。県が先導していくべき」と指摘する。
 (東部総局・八木敬介)
 
 Q 県内では最先端技術を活用した「未来都市」の実現を目指す動きがあります。こういった動きに対するご自身の考えと、規制改革の在り方、県の役割をお示しください。

 川勝氏 環境充実へ全面協力
 ウーブン・シティのプロジェクト発表直後の昨年1月に、トヨタ自動車の豊田章男社長と県庁で会談し、相互の連携を確認した。未来都市の実現は、地域のさらなる飛躍を後押しする千載一遇のチャンス。先端技術に携わる技術者が世界中から富士山の麓の実験都市に集まり、生活する。生活に不可欠な医療、買い物、教育環境を充実させる方向で全面協力。
 岩井氏 行政デジタル化推進
 官民学連携のもとDX(デジタルトランスフォーメーション)を活用したビッグプロジェクトを推進することで、これまで静岡が築き上げてきたモノづくり産業を深化させ、新たなイノベーションの創出による成長産業への転換が図れると期待している。県の役割は行政のデジタル化をより一層推進し、スマートシティの実現に向けて環境整備を行うことと考える。

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