前例のない危険な暑さに備えを 「熱中症特別警戒アラート」とは?
前例のない危険な暑さに備えるため、現行の「熱中症警戒アラート」の上位に位置づける「熱中症特別警戒アラート」の全国運用が4月24日、始まりました。健康に重大な被害が生じる恐れのある暑さが予想される場合に環境省が前日発表し、最大限の予防行動を促します。「特別警戒アラート」の概要と、静岡県内でも模索が続く熱中症対策をまとめました。
4月24日に運用開始 静岡県内自治体「涼みどころ」開設の動き
過去に例のない危険な暑さに備える「熱中症特別警戒アラート」の運用が24日、全国で始まった。地球温暖化の影響で熱中症のリスクが高まる中、最大限の予防行動を促す。静岡県内でも熱中症搬送者は増加傾向にあり、静岡県は「自分と周りの人の命を守ってほしい」と警戒を呼びかける。自治体が冷房の効いた休憩場所を「クーリングシェルター」として開放する動きも広がってきた。
静岡県内の観測地点は17あり、県によると、これまでに暑さ指数が35以上になったケースはないという。県はアラート発表の際には市町と連携し、同報無線やSNSを通じて熱中症にかかりやすい高齢者や乳幼児への配慮、対策を徹底できない場合の運動やイベントの中止・延期の検討を呼びかける。熱中症予防啓発ポスターも作成し、県内の学校や薬局などに配布する。
熱中症のリスクは高まっている。県によると、2023年度の県内の熱中症搬送者数は2162人で、前年度から474人増えた。熱中症警戒アラートの発表回数も23年度は29回に上り、21、22年度の各7回に比べて突出した。
熱中症を予防するため、自治体が暑さをしのぐ休憩所を開放する取り組みも広がる。富士宮市は昨年8~9月に公共施設と市内のドラッグストア計14カ所にクーリングシェルターを設けた。本年度も継続する計画で、担当者は「暑さから逃れて涼める場所を提供したい」と周知を図る。島田市も昨年度に続いてクーリングシェルターを開設する予定という。
気象庁の3カ月予報によると、5~7月は全国的に気温が高くなる見込み。県健康増進課の担当者は「こまめな水分補給やクーラーの使用など、日ごろから熱中症予防を心がけてほしい」と話す。
(政治部・森田憲吾)
<2024.04.25 あなたの静岡新聞>
「暑さ指数」35以上予測の都道府県対象 前日午後に発表
環境省は(2023年9月)6日、災害級の熱波に備えるための「熱中症特別警戒情報」について、原則として全域で「暑さ指数」が35以上になると予測された都道府県を対象とし、前日午後に発表する方針を明らかにした。運用指針の中間とりまとめ案が同日の専門家検討会で示され、了承された。次回検討会で最終とりまとめを行い、2024年春以降に運用を始める。
暑さ指数は、気温や湿度、日差しの強さから算出。熱中症との相関性が高いとされ、環境省が全国約840地点の数値を公表している。中間とりまとめによると、特別警戒情報は原則として前日午前10時時点で判断。全地点での暑さ指数が基準に達するとの予測で、前日午後2時に発表する。
環境省によると、20年8月に埼玉県の全地点で暑さ指数が34以上となった日があるが、全域で35以上となったケースは近年ないとみられる。また、暑さ指数35の日の熱中症による救急搬送者数を推計すると、新型コロナウイルス禍で搬送困難事案が多発した時期を超える可能性があり「過去に例を見ない危険な暑さで、健康に重大な被害が生じる恐れがある」とした。
特別警戒情報の発表時には、市区町村は事前に決めた「指定暑熱避難施設」(クーリングシェルター)を開設する。検討会では、指定や設置の手引に加え、薬局や銭湯といった民間施設を活用した自治体の先行事例集も公表した。
<2023.09.06 あなたの静岡新聞>
暑さ指数 熱中症予防のための指標。WBGTとも表記する。気温と湿度、日差しの強さなどから算出し、熱中症との相関性が高いとされる。環境省が全国約840地点の実況値や予測値を公表しており、暑さ指数が31以上だと、運動は原則中止とする「危険」で、28以上が「厳重警戒」、25以上が「警戒」。4月に全面施行された改正気候変動適応法では、暑さ指数35以上になると予想された場合に発表される「熱中症特別警戒アラート」を新設。33以上で発せられる「熱中症警戒アラート」の一段上に位置付けた。
<2024.04.25 あなたの静岡新聞>
冷房を備えた公共施設に避難を 焼津市は全小中体育館に空調設置へ
焼津市は市内全小中学校体育館にエアコンを設置する。2024年度に中学校9校で工事に着手し、小学校13校で設置に向けた設計に取りかかる。5日までに関係者への取材で分かった。
市は19年度に市内の小中学校全22校の普通教室と特別教室でエアコンの設置を完了している。
体育館は一般市民も利用したり、災害発生時の避難所にも指定されていたりしていることから、市では学校施設の利用拡大や避難生活での健康維持の観点から、整備に踏み切った。
ミストシャワー設置や冷却グッズ配布も
焼津市は2024年度、「熱中症弱者」とされる子どもや高齢者、障害者を対象にした対策に乗り出す。小中学校や保育園、幼稚園にミストシャワーを設置するほか、小学生全児童や高齢者、障害者に体を冷やすグッズを配布し、暑い夏に備える。
市では猛暑を災害として捉え、熱中症リスクの比較的高い市民に軽減策を施す。関係者によると、ミストシャワーは小中学校全22校、公立幼稚園・保育園計10カ所の園庭や運動場に設置する。私立幼稚園や保育園には設置費用を助成する。
熱中症対策として小学生全児童約6300人にランドセル背あてパッドとクールタオル、高齢者や障害者にネッククーラーをそれぞれ配布する。そのほか、公共施設や民間施設を暑さをしのぐ「クーリングシェルター」に指定する対策も導入する方針。
<2024.02.06 あなたの静岡新聞>
静岡県中学総体でも対策 軟式野球の夕方開催施行へ
静岡県中学校体育連盟は、今夏の県中学総体の軟式野球で、第1試合の開始を午後3時にするなどの熱中症対策を試行する。12日に静岡市内で開いた評議員会で日程案などを含む事業計画を承認した。
サッカーやソフトテニスなど、その他の屋外競技については、軟式野球で得られた効果や課題を踏まえ、本年度新設する「県中体連今後の在り方委員会」などで対策を検討するという。評議員会で再任された長沢滋文会長(静岡長田西校長)は、「生徒の命を最優先した上で、思い出に残る大会にしたい。中学部活動が転換期にある中、これまでの概念にとらわれず、まずやってみようということ」と話した。
<2024.04.13 あなたの静岡新聞>
夏の甲子園は一部日程で朝夕「2部制」
日本高野連は19日、今夏に行われる第106回全国高校野球選手権大会の運営委員会を大阪市内で開き、暑さ対策として、一部の日程で試合を午前と夕方に分ける「2部制」を導入することを決めた。大会第1日から第3日の試合数を1日3試合として実施する。暑さがピークとなる時間帯を避けるのが目的。
第1日は、午前8時半からの開会式後、10時から第1試合を行い、午後4時から第2試合、6時半から第3試合を行う。第2、3日の第1試合は午前8時、第2試合が10時35分、第3試合が午後5時の開始。第1日の第1試合は午後1時半、第2、3日の第2試合は2時半で終了していない場合は、原則として試合を中断して「継続試合」とし、翌日以降に中断時点からの試合の続きを行う。
準決勝の第1試合は昨年より1時間早い午前8時、決勝は4時間早い午前10時の開始。
第1日は第1試合後に、第2、3日は第2試合後に観客の入れ替えをする。「2部制」を実施する3日間は、チケットは午前と夕方で別になる。日本高野連の井本亘事務局長は「一歩目を踏み出さないと、いろんな展開が見えてこない。課題を見つけて、4試合で2部制ができるか、可能性を探りたい」と説明した。
夏の甲子園大会の期間中は気温35度を超えるような猛暑が続くため、日本高野連は2022年、「2部制」を含む新しい暑さ対策について議論を始めていた。昨夏の大会では、各試合の五回終了後に、選手らが冷房の効いたスペースで水分補給や身体冷却を行う10分間の「クーリングタイム」が導入された。
第106回大会は8月7日に兵庫県西宮市の甲子園球場で開幕する。
〈2024.04.20 あなたの静岡新聞〉