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GUNDAM FACTORY YOKOHAMAに行ってきました!RX-78F00から“ロボット”を考える


SBSラジオ「TOROアニメーション総研」のイチオシコーナー、人気アニメ評論家の藤津さんが語る『藤津亮太のアニメラボ』。今回は藤津さんが横浜にある“動くガンダム”こと「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」に行かれたということで、ロボットについてお話を伺いました。※以下語り、藤津亮太さん

RX-78F00はイケメンだった!

先日、横浜の「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」へ行ってきました。そこには設定と同じ大きさ(18m)の“動く”ガンダムがあります。

このガンダムは1時間に1回ほど動くイベントが用意されています。ミニストーリーに合わせて音楽やセリフが流れてきて、それにあわせて歩いたり(正確には足が接地していないので、歩くような仕草、ですが)、跪いたり、腕を動かしたりします。

どういう仕組みで動くのかを大雑把に説明すると、外装はお台場のユニコーンガンダムなどと同じカーボン樹脂でできていて、中身はパワーシャベルなど重機の技術を生かした「骨格」があり、その骨格を産業用ロボットの制御システムで動かしているんです。

さすがに単体で動かすことはできず、背面の腰部分から支持フレームが伸びて巨大な搬送台車に繋がっており、これによって全身が支えられています。

このガンダムの形式番号はRX-78F00といい、横浜近辺でバラバラになったパーツが発見され、遠い未来の人が復元したという設定。アニメに出てきたガンダムRX-78とは、ちょっとディテールの形状が違う部分もあるのですが、そこにリアリティを持たせるため「復元した機体」という体をとっています。

このRX-78F00は顔がいいんですよ。人形は顔が命といいますが、ガンダムも顔が命! メカは強そうに見せると、目尻が上がったつり目の顔になってしまうんですが、安彦良和さんが描いた最初のガンダムはほどよくタレ目気味になっています。そこが大事なんです。

目の形状が、目尻のところのボリュームがちょっとある感じになっていて、それがいかにもガンダムらしい顔をしていて、細部は違えど、これは良いガンダムを見たなという思いでした。『逆襲のシャア』に登場するνガンダムのデザインを決めるとき、富野(由悠季)監督がメカデザイナーの人に修正指示を出しているんですが、そこには「ガンダムは好男子!」と書いてあるんですよ。

要は、相手に圧を与える怖い顔より、いい男に描いてほしいと。なので、構成要素やパーツは全部一緒ではあるものの、少し目元のバランスなどを調整して出来上がったのが今のνガンダムの顔なんです。そういう意味で、RX-78F00は好男子な出来栄えでよかったです。

人間型だからこそ伝わる人間らしい感情

ロボットは元々は男の子の“人形遊び”の道具という側面があるので、子供が自分を投影できるよう人間型をしている必要があるし、玩具メーカーがそれを主導してきた歴史があります。

つまり人間型ロボットが、一つのジャンルになっているのはビジネス的な理由が大きいんですが、でもやっぱり愛されるには愛される理由があるんです。

人間は人間の動きの中から感情を読み取る力があります。だから人間型のロボットは、その仕草でパイロットの感情が伝わってくるんですよね。

RX-78F00の良いところは腰に可動軸があるところ。首を横へ向けるときに上半身も少しそれに連動して動きます。これだけで雰囲気がめちゃくちゃ人間らしくなるんです。
また、顔を見る角度で表情が感じられるというのは能面と一緒ですよね。面も伏せると悲しい顔になって、上げると怖い顔になる。それと同じような効果がロボットにはあります。

僕は『機動戦士ガンダム』のポイントは、ロボットを「兵器」に見立てたこと以上に、「歩兵」に見立てたことがすごいと思っています。だって兵器というだけだったらガンダムは、あんなに人間くさく動く必要はないんですよ。しかし、「人間っぽく動く=歩兵」として演出されることで、戦闘シーンの中でいろんなエモーションが伝わるようになっています。

それで思い出したのが『機動戦士ガンダムSEED』の第40話「暁の宇宙」です。宇宙へと打ち上げられている宇宙船を、キラが乗るフリーダムとアスランが乗るジャスティスが追うシーンがあるのですが、先に宇宙船に取りついたフリーダムが手を伸ばして、ジャスティスを捕まえるんです。しかも、手首を掴む感じではなく、なぜか指と指を絡ませてガチッと掴む。

その次に、ガンダム同士が目を見交わすカットになります。2つのガンダムの顔がアップで一つのフレームに入る。ここはそのまま「アスラン=ジャスティス」、「キラ=フリーダム」という感じで、コックピットのふたりの顔を見せなくても、ふたりが信頼感をもって視線を交わしたと感じられるようになっています。

当時は、女性がキャラグッズのひとつとしてガンプラを買い始めた時期でもありました。パイロットを推してるから買うんだっていう考えですね。ロボットをパイロットとほぼ同じ存在として人間臭く演出したこのシーンをみると納得できます。

やはりロボットが人間と同じ形をしてるからこそ、この感情が表現できるんだなということを、横浜に行って改めて考えました。

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