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「愛する早季へ……」泣ける!感動的なラブレターが出てくるアニメ『新世界より』

SBSラジオで毎週月曜夜7時から

SBSラジオ「TOROアニメーション総研」のイチオシコーナー、人気アニメ評論家の藤津さんが語る『藤津亮太のアニメラボ』。今回はラブレターが出てくるアニメについてお話をききました。※以下語り、藤津亮太さん

感動的なラブレターが出てくる『新世界より』

ラブレターが出てくるアニメは結構あるのですが、宛先不明のラブレターを巡ったドタバタ騒動のようなものが多く、文面が見えたり、文章で何か心に残るものというのは、実はあまりありません。その中から手紙の文面が出てきて泣ける、『新世界より』(2012年)という作品の手紙を紹介しようと思います。

『新世界より』は、元々は小説家の貴志祐介さんが書いたSF小説で、石浜真史監督がアニメ化しました。人類が超能力(作中では呪力と呼ばれる)でサイコキネシスを使えるようになっており、それによって戦いが起きて、文明が崩壊した遠い未来が舞台です。1000人ぐらいの単位で人類が暮らすような小さな町がポツポツとあるだけ。労働力として、ある動物を改造したバケネズミという、人の話す言葉をある程度理解する生き物を使っています。

誰もが超能力をある程度持っているのですが、暴走すると、人類が滅亡しかけた過去のようになってしまうので、社会には超能力を暴走させない仕組みができています。人間自身に対しても遺伝子的に改良が加えられており、人間相手に呪力を使うと死んでしまいます。たまにその仕組み「愧死機構」が効かない特殊な人間が生まれることもあるため、少しでも危険な予兆があったら排除するという世界になっています。

もう一つ、人類が暴走せず心をリラックスさせられるよう、ボノボという猿系の動物の遺伝子が組み込まれています。ボノボは同性間でグルーミングして、気を鎮めるという習慣があるんですね。なので、同性間でも恋愛がある社会になっています。文化とかそういうレベルではなく、遺伝子レベルでそういうことが当たり前になっている社会です。

物語の舞台は神栖66町という、3000人くらいしか住んでない小さな町。主人公は早季という14歳の少女です。ある日、守という少年が排除されそうになります。そのとき、早季の彼女である真理亜が彼を追って、村から姿を消してしまいます。

突然いなくなってしまったので、早季と友人の覚が彼女たちを追っていくと、バケネズミが、真理亜が早季に残した手紙を持ってあらわれます。この手紙というのが、原作が小説だけあってすごく言葉で訴えてくるんですよね。

第15話の終わりに手紙が出てきて、第16話では冒頭から9分間ぐらい、花澤香菜さん演じる真理亜が1人で手紙の内容を語る演出が続きます。回想などの映像も入りますが、セリフ的には1人でずっと話しているという感じです。

この手紙は、「愛する早季へ。あなたが、この手紙を読むころには、私と守はどこかずっと遠い場所にいるはずです。親友であり、恋人でもあったあなたに、こんな形で、別れの手紙を書かなければならないとは、思ってもみませんでした。本当に、本当に、ごめんなさい。そして、どうか、わたしたちを捜さないでください。」という別れの言葉から始まります。

中盤で自分たちの住んでる世界がおかしいんじゃないかということを訴えた後、最後には、「町から、わたしたちの消息を聞かれたら、わたしたちは死んだと報告してほしいのです。(中略)いつか、また、早季たちに会える日が来ることを、心の底から願っています。愛を込めて。あなたの真理亜」となります。

「愛する早季へ」から始まって「あなたの真理亜」で終わる、別れの手紙なのですが、間に自分が好きになった早季がいかに強い人間であるかを称えるくだりがあり、ある意味究極のラブレターみたいなところがあって、このアニメは非常に印象に残りました。やはりラブレターは手紙なので、そこに書かれた文章の力や魅力を知りたいですよね。アニメの中に出てくると、手紙の本文が紹介されることがあまりないのが残念です。手紙らしい手紙が登場するアニメ、『新世界より』をご紹介いたしました。

SBSラジオTOROアニメーション総研(毎週月曜日19:00~20:30 生放送・毎週日曜日15:00~16:30 再放送)全国のアニメ好きが集まるラジオの社交場。ニッポンのアニメ文化・経済をキュレーションするラジオ番組。番組公式X(旧Twitter) もぜひチェックを!

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