物価高どう乗り切る? 達人が節約・節電策伝授【NEXTラボ】

 世界情勢を受けた原材料価格の高騰と、原油高による物流費や包装資材の上昇、急激な円安などを背景に食品や日用品の値上げが止まらない。 電気やガス料金も近年にない水準になり、家計に圧迫感を覚える人も多いのでは。生活コストを少しでも抑えるために、取り組むべきことを専門家に聞いた。

値上げ、夏以降に加速 民間調査

 

 食料品の値上げは加速している。帝国データバンクによる食品主要105社の価格改定動向調査によると、今年値上げされた食品は、6月末までに6451品目。10月までにさらに8806品目の値上げが予定される。

値上げが加速している食料品。スーパーの買い物客の多くが「物価高を実感している」と話した=静岡市駿河区
値上げが加速している食料品。スーパーの買い物客の多くが「物価高を実感している」と話した=静岡市駿河区

 各品目の平均値上げ率は13%。分野別では加工食品が最も多く、酒類・飲料、調味料が続く。夏以降は年当初に比べ値上げ幅が拡大傾向。 これまでの原材料費や物流費、包装資材の高騰に加え、急速な円安による輸入コスト増を主要因とするケースが目立っている。

買い物客アンケート 20人中18人「物価高い」

 

 物価高について一般の人はどう感じているか。静岡市駿河区の「スーパーおさだ」の協力を得て、買い物客20人に聞いた。最近物価が高くなったと感じるかとの質問には、12人が「非常に感じる」と答え、「感じる」とした人も合わせて18人が物価高を実感していた。
 値上がりを感じる商品を聞くと、玉ネギなどの野菜や魚類、パン、食用油、調味料、乳製品などが上がった。「全般的に少しずつ高くなっている」とした声も目立った。
 同店では、極端な値上げにつながらないよう産地の見直しなど仕入れに工夫を凝らす。川村真之店長(48)は「利益を確保しつつ、お客さんへの影響は最小限になるよう知恵を絞りたい」と話す。
 店頭アンケートより 「節約意識していますか?」
 ◆玉ネギをネギで代用するなど、高い食材は避ける(43歳、主婦)
 ◆家族が多いので、肉を少なめにするなど材料を節約している(71歳、自営業女性)
 ◆冷蔵庫の在庫を見てメニューを決め、必要なものだけ買い足す(74歳、無職女性)
 ◆安い食材を見つけ、そこからメニューを考える(38歳、パート女性)
 ◆おかずを3品から2品に減らした。夕方の特売品を狙って買う(48歳、パート女性)
 ◆買い物に行く回数を減らしている(72歳、無職女性)
 ◆物によって安く買える店を探し、使い分ける(73歳、主婦)
 ◆菓子類やデザートを買わないようにした(74歳、主婦)


 

家事の達人 アドバイザー矢野きくのさん 無駄把握、PB活用も

  photo01 やの・きくの 生活実践を基に時短家事や家庭内の節約について発信する
 食費や料理にかかる消費電力などを抑えるためにどんな工夫ができるか。家庭での節約術に詳しい家事アドバイザー矢野きくのさん(神奈川県在住)に聞いた。

■買った食材使い切る
 食費を節約するために最初にすべきなのは、買った物を全部使い切ること。そのためには、家計簿ならぬ「捨てたもの簿」を付けてみて。記録すると、自分が捨てがちなもの、無駄に買っているものが分かり、対策を立てやすい。
 チラシを見ないのも有効な対策。安いものを探して買い歩くと確かに多少のお金は浮くが、それ以上に余計なものを買う可能性が高い。買い物の機会はできるだけ減らして。
 多くの大手スーパーなどでは、独自に企画したプライベートブランド(PB)商品を展開している。価格が安定していて、大手メーカーの商品より1割以上安い。継続的に買えば節約効果は大きい。
 業務用食材を扱うスーパーなどを活用するのも手。特に、大容量の冷凍野菜は賞味期限が長く、少しずつ使えて無駄も出ない。旬の時季に処理するので実は栄養価も高い。
 最近では、食品を扱うドラッグストアも増えている。品数は多くないが、極端に安い商品が必ずある。そういう商品を定番で利用するのもいい。ネットスーパーは冷蔵庫の在庫を見ながら買い物ができ、会計金額もリアルタイムで分かるため、予算を守りやすい。

■冷凍庫内 隙間なく
 冷蔵庫の使い方にも注意が必要。効率よく冷やすには中身を詰めすぎず、開け閉めを最低限にすること。そのためには中身の整理が重要。冷凍庫は逆に、隙間を作らず詰め込む方がいい。 そのために余計な食品を買うのは本末転倒なので、冷凍可能なペットボトルに水を入れて一緒に凍らせる。停電時に保冷状態を保つのにも役立つ。
 調理方法も工夫できる。煮炊きは室温を上げるので、冷房効率を考えるとできるだけ短時間で済ませたい。電子レンジを活用して野菜を下ゆで状態にし、鍋で煮込む時間は最低限にする。時短にもなり一石二鳥。

家計の達人 FP山崎栞里さん 生活の“仕組み”再検討

  photo01 やまざき・しおり 民間企業を経て2020年、静岡市にファイナンシャルプランナー事務所開業
 物価高から家計が苦しいと感じる人は、どんなことをすべきか。静岡市で家計相談などを行うファイナンシャルプランナー(FP)の山崎栞里さん(31)に助言をもらった。

■まず家の中を断捨離
 遠回りのようだが、まずは家の中の断捨離を行ってみて。買ったけれど使っていないもの、使い切れず古くしてしまったものなどは思い切って捨てる。作業の中で自分に不要なものが見え、買わない行動につながる。
 家計の足しという意味で簡単にできるのはポイント活用。今は定期預金の金利も0.002%などという時代だが、スーパーなどで使えるさまざな共通ポイントを活用すると、買い物額に応じて高いと1%もポイントが付く。
 ためたポイントは、利用条件のいい時に使う。例えば自分の使っているポイントは、特定の日に特定の店で使えば1.5倍分のポイントとして使える。利用しているポイントがあれば一番得になる使い方を調べてみて。
 次はプリペイドカードの活用。自動入金の機能は使わず、自分の手で決まった金額を入金する。例えば食費を3万円などと決めて月初に入金し、その中でやりくりする。残高も分かり、足りなくなって追加入金したとしても、どのくらい超過したか自覚できる。

■固定費から見直しを
 家計見直しの着目点はいろいろあるが、固定費の精査は重要。保険類は家族構成や生活に見合っているか定期的にチェックを。小型車への乗り換えなども効果は大きい。電気やガスは新事業者への乗り換えも選択肢だが、現在は事業者の経営環境悪化も伝わるので、時期は慎重に。
 こうした固定費は一度見直せば節減効果が続く。家計が苦しいと感じたら、一度無駄を徹底的に見直し、それまでよりお金をかけずに生活する仕組みを構築することが大切だ。
 シングルマザーの家計相談では、養育費をもらっていないケースが非常に多い。事情はさまざまだが、「関わり合いたくない」といった母親の都合が理由であることも多い。貧困の連鎖を生まないためにも、養育費は必ずもらう努力をしてほしい。支援の仕組みはいろいろある。
 

エアコンの達人 エネジン杉本真一さん 電源入れる前に換気

  photo01 エアコンフィルターの清掃作業をする杉本さん=浜松市内
この夏、電気料金の上昇と電力需給見通しの厳しさから、二重の意味で大事になる節電。家庭で多くの電力を消費するエアコンの上手な使い方を、設置や修理を手掛けるエネジン(本社浜松市)の杉本真一さん(44)に聞いた。

■こまめにフィルター掃除 photo01
 まず、猛暑も予想される中なので、熱中症対策としてエアコンはしっかり使ってほしい。その上で無理のない節電を心掛けて。エアコンの節電の基本は、前部のフィルターやその奥のフィン(熱交換器)を定期的に手入れし、きれいに保つこと。 怠ると効率良く動かず、余計な電気を使ってしまう。
 最近のエアコンの多くはフィルターの自動掃除機能が付いているが、正常に作動しているかチェックが必要。機能を切っていたり、24時間稼働させっぱなしだったりすると作動していないことも。
 自分でフィルターを掃除する場合は、2週間に1回程度、運転を停止した状態で本体から外し、軽い汚れなら表側から掃除機で吸い取り、目詰まりがあれば水洗いする。台所近くなどで油汚れがあれば、食器用や住宅用洗剤でつけ置きを。
 フィルターの奥のフィンの掃除は、電源を抜いてハンディタイプの掃除機などで汚れを取る程度に。洗浄用スプレーも市販されているが、誤った使い方による故障が珍しくないので注意が必要。本格的な清掃は専門業者に依頼してほしい。

■扇風機併用 空気を循環 photo01
 節電効果を生むために各メーカーが推奨する設定温度は28度。設定温度を1度上げると、約10%の節電になる。スイング機能を上手に使い、扇風機などを併用して冷たい空気を室内に循環させるとさらによい。カーテンで外からの熱や光を遮断するのも有効。
 帰宅したら、スイッチを入れる前にまず換気。これだけで冷房の効きはまったく違う。室外機の環境も重要で、周辺に物を置くと冷房効率は下がる。よしずなどで直射日光を遮り、周辺に打ち水をして温度を下げるのも効果がある。
 新たに購入する時は、きちんと部屋の広さに見合ったものを。値段に応じて省エネ性能も高いことが多いので、価格だけでなく、長い間の電気代も考慮して選んでほしい。

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